ゲーミフィケーションの使い方を間違えると、逆に仕事のパフォーマンスは低下してしまう
ゲーミフィケーションとは、タスクをゲーム化して楽しめるようにすることです。ゲーミフィケーションは仕事にも応用できて、
- 仕事のスキルレベルを見える化してレベルアップを実感できるようにする
- クエストをこなすようにステップ毎の目標をクリアしていく
- 仕事の貢献度のスコアをつけて優秀チームには報酬を与える
といったゲーム化が社員のモチベーションを高めてくれることが分かっています。
しかし、”ゲーム化すれば楽しくなるからモチベーションも上がる”という考えは絶対的に正しいように思えますが、いくつかの研究ではゲーミフィケーションが逆にモチベーションを低下してしまう結果にもなっています。ゲーミフィケーションはうまく取り入れなければ逆効果になってしまう可能性があるわけです。
本稿では、この現象を再現してくれたナミュール大学らの研究(*1)を参考に、
- ゲーミフィケーションが逆効果になってしまうのはどんなときか?
について学んでいきましょう。
ゲーミフィケーションと参加意欲
ナミュール大学の研究では2つの実験で、ゲーミフィケーションの効果を測定しています。どちらの実験も現実の仕事の中でゲーミフィケーションを取り入れていて、実験室で行う実験よりも社員のずっとリアル反応が得られています。
実験1:コールセンター
一つ目の実験では、コールセンターを対象に、1日だけ電話対応の成績を競い合うコンテスト形式のゲームを行なって、その後に仕事のエンゲージメントや仕事満足度がどのように変化するのかを測定しています。
その結果を見てみると
- コンテスト形式のゲーミフィケーションは社員のエンゲージメントは低下させ、これは2週間経っても消えることがなかった
- エンゲージメントが低い社員ほど、仕事のパフォーマンスも低い傾向があったので、ゲーミフィケーションはパフォーマンスの低下にもつながっていた
ということ。
社員の声としては、”ゲーミフィケーションに意欲的に取り組んで楽しめた”という人ももちろんいました。しかし、他の人は”報酬でつってパフォーマンスを上げようとしている魂胆が見え透いている”とか、”他の人と成績が比較されるのがプレッシャーに感じる”という意見が多く、そもそも仕事へのモチベーションが低い人には逆効果になってしまっているようです。
実験2:スポーツ用品店
2つ目はスポーツ用品店でゲーミフィケーションを取り入れています。こちらの実験ではコンテスト形式のゲーミフィケーションと、みんなで協力して目標を達成する形式のゲーミフィケーションの2タイプを実験しています。そして、今回の実験ではゲーミフィケーションの参加意欲も考慮した分析を行っています。
その結果を見てみると、
- ゲーミフィケーションにより仕事満足度の低下が見られたが、それは参加意欲が低い人のみだった
- 参加意欲が低い人は仕事満足度の低下の他に、エンゲージメントと仕事のパフォーマンスも低下していた
- これはコンテスト形式でも協力形式でも同じだった
ということ。
つまり、ゲーミフィケーションは、積極的に参加する人にとってはプラスになっても、あまり参加意欲が無い人にとってはマイナスの効果になってしまうということ。今回の実験は現実の仕事の中で行なっているので、仕事へのモチベーションが低くて参加意欲のない人のマイナス効果が顕著に現れたようです。なので、ゲーミフィケーションを取り入れるときには、自由参加にするなどして、参加したくない人まで無理に参加させないように配慮した方が良いでしょう。
まとめ
本稿では「ゲーミフィケーションが逆効果になるとき」についてお話ししました。
ポイントとしては
- ゲーミフィケーションは積極的に参加してれる人にはプラスの効果があるが、参加意欲のない人に対してはエンゲージメントの低下やパフォーマンスの低下といったマイナスの効果になってしまう。
ということ。
参加意欲が低い人をゲーミフィケーションに無理に参加させても、やらされ感でゲームのようには楽しめはしないでしょう。現実の仕事ではモチベーションが高い人ばかりではないので、このマイナス効果には気をつけてゲーミフィケーションは取り入れるようにしましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Uncovering the dark side of gamification at work: Impacts on engagement and well-being