仕事のチーム内の競争は、チームの学習やパフォーマンスにどう影響するのか?
勉強でも、スポーツでも、仕事でも、競争がある場合とない場合で、参加者の行動や考え方は変わります。競争がある場合だと、他人に勝手認められたいという気持ちが優先されて、自分の成長を第一に考える行動が減ってしまうことがあるんですね。
心理学の研究では、この現象を学習目標と成績目標の2つの分類で説明します。
学習目標
- 自分が成長すること第一に考える目標
- 困難な課題に挑んだり、積極的にフィードバックをもらったりする
- 自己効力感が高まりやすい
成績目標
- 他人に勝って実力を認められることを第一に考える目標
- 失敗したくないという気持ちが強く、困難な課題は避けてしまう
- 他人との比較をしてしまうので自己効力感は低下しやすい
人によってどちらの目標の好むのかの性格が違いますし、チーム全体の傾向としてもどちらの目標を好むのかが違ってきます。そこで、本稿では、
- 仕事のチーム内での競争があると、メンバーは成績目標を優先するようになって、学習目標が低下してしまのか?
を調べてくれたヤーコプス大学の研究を参考に、チーム内の競走がメンバーにどんな影響を与えるのかを見ていきましょう。
チームの競走と目標の変化
ヤーコプス大学の研究では、自動車業界で働く55チームの計502人の従業員を対象にデータの取得をしています。データとしては
- チーム内での競争の強さ
- 個人の性格としての学習目標・成績目標
- チーム全体としての学習目標・成績目標
- 上司の評価での仕事のパフォーマンス
- 自己効力感
が測定されていて、チーム内の競争は、目標のタイプにどのように影響して、最終的に仕事の成果や自己効力感がどう変化するのかを分析しています。
結果1:目標のタイプの仕事への影響
まず最初に個人とチームの学習目標/成績目標がそれぞれ仕事のパフォーマンスや自己効力感にどのように影響していたのかを見てみると、
- 個人の性格として学習目標を好む人は、チーム内では学習目標と成績目標の両方が高い傾向があった
- 個人の性格として成績目標を好む人は、チーム内でも成績目標が高い傾向があった
- 学習目標が高い人は、自己効力感が高い傾向があった
- 成績目標が高い人は、仕事のパフォーマンスが高いが、自己効力感は低い傾向があった
ということ。
なので、学習目標は自己効力感を高めて、成績目標は仕事のパフォーマンスを高めてくれるということ。個人の性格として学習目標が高い人は、チーム内では学習目標と成績目標の両方が高い傾向があるので、自分の成長と成績を認めてもらうことをうまく両立しているのかもしれませんね。
結果2:競争があるとどうなるか?
次にチーム内での競争が激しい場合にどのような影響があったのかというと、
- 個人の性格として成績目標を好む人は、チームの競争が激しいと、成績目標を第一に考えて学習目標は低下してしまう傾向があった
- 個人の性格として成績目標を好まない人は、チームの競争が激しくても、学習目標を維持できた
ということ。つまり、競走があると成績目標が上昇する傾向があり、特に個人の性格的に成績目標を好む人は、長期的な成長よりも競争に勝つことを優先するようになってしまうようです。
一方で、競争が低い場合では面白いことも起こっていて、
- チーム内の競争が低い場合には、個人の性格として成績目標を重視する人は、学習目標も高まった
ということ。チーム内で激しく競争するプレッシャーがなければ、成績目標を好む人も、自分を長期的に成長させる視野を保てるようですね。競争は成績重視で仕事のパフォーマンスを高める効果がある反面で、長期的な学習が低下してしまうメリット・デメリットがあるということですね。
まとめ
本稿では「チーム内の競走と目標タイプの影響」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 学習目標は自己効力感やメンバーの成長を高めてくれる
- 成績目標は目標の範囲内での仕事のパフォーマンスを高めてくれる
- チーム内の競走が激しいと、成績目標を重視する人ほど学習目標が低下してしまう
- チーム内の競走が弱いと、成績目標を重視する人でも、学習目標が向上する
ということ。
学習目標と成績目標のそれぞれに異なるメリットがあるので、どちらを重視するかは最終的に得たい成果に合わせると良いでしょう。例えば、短期的に仕事のパフォーマンスを高めたい場合には、チーム内の競争を活用して成績目標を高めるなどの工夫も有効なのではないでしょうか。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]