セルフ・コンパッションで幸福感はどれだけ向上するのかのメタ分析
セルフ・コンパッションとは、困っている人に優しく接するように、自分自身にも思いやりを向けることができることです。セルフ・コンパッションが高い人は、落ち込んだときでも自分自身に優しくできるので、早く立ち直れたりするんですね。
それでセルフ・コンパッションには様々な良い効果があって、
- 食生活が改善する
- ネガティブな思考を繰り返してしまうのが減る
- 不安やストレスが軽減される
などの効果が確認されています。
そこで本稿では、
- セルフ・コンパッションは幸福感を向上してくれるのか?
を調べてくれたマンハイム大学の研究(*1)を見てみましょう。
セルフ・コンパッションの3つの柱
まず最初にセルフ・コンパッションには3つの基本的な柱があります。
- ①自分への優しさ
落ち込んだ時や失敗した時に、自己批判をするのでなく、自分に優しさを向けられること - ②共通の人間性
辛いのは自分だけだと狭い視野にならずに、辛い思いをしている人は他にもいっぱいいるし、人間誰しも辛い経験をする時期もあるものだと、広い視野で考えること - ③マインドフルネス
過去に失敗に囚われたり、頭の中に思い浮かんでくるネガティブな感情に囚われるのでなく、「今自分はネガティブな気持ちを感じているんだな〜」と客観的な視点で気づきを得ること
こんな感じで、ただ自分に優しくするだけでなく、考え方を広げて感情にうまく対処できることもセルフ・コンパッションには含まれるんですね
セルフ・コンパッションと幸福感
マンハイム大学の研究では、セルフコンパッションと幸福感について調べた79件の研究(16,416サンプル)をメタ分析でまとめてくれています。
このときに幸福感を3つの分類に分けていて
- ①認知的な幸福感
自分の人生にどれだけ満足しているかという、自分に人生の認知面から見た幸福感 - ②感情的な幸福感
不安や怒りといったネガティブな感情が少なくて、楽しさや嬉しさといったポジティブな感情が多いという、感情のバランスから見た幸福感 - ③心理的な幸福感
自分の人生に意義を感じていたり、自己実現を感じているタイプの幸福感
と、これら3つの幸福感に対してセルフ・コンパッションがどう関係しているのかをまとめてくれています。
結果:
早速結果を見てみると、
- セルフ・コンパッションは幸福感全体に対してr=0.47の相関があった
ということ。なので、セルフ・コンパッションが高い人ほど幸福感が高いというそこそこの強さの傾向が確認されています。
幸福感を分けてもう少し詳しく見てみると
- 心理的な幸福感に最も強い相関があった(r=0.62)
- 認知的な幸福感にもそこそこ相関があった (r=0.47)
- ポジティブな感情面の幸福感には弱めだけど相関があった(r=0.39)
- ネガティブな感情面の幸福感にもそこそこ相関があった(r=−0.47)
ということ。つまり、セルフ・コンパッションが高いと人生の意義や人生の満足感を強く感じやすい傾向が特に強いわけですね。感情面の幸福感には少し効果は弱まるようで、ネガティブな感情を減らす効果はそこそこありますが、ポジティブな感情を増やす効果は弱めなようです。
参考:男性と女性の違い
ちなみに、どんな人がセルフコンパッションで幸福感が高まりやすいのかを調べた結果を見てみると、
- 女性の方がセルフ・コンパッションで幸福感が高まりやすい傾向があった
ということ。女性の方が他人に共感や思いやりを向けるのが得意なので、自分自身へのセルフ・コンパッションも上手なのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「セルフ・コンパッションと幸福感」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- セルフ・コンパッションが高い人ほど、幸福感は高い傾向がある
- セルフ・コンパッションは嬉しさや楽しさといったポジティブな感情を高める効果もあるが、ネガティブな感情を抑えたり、人生の意義や満足感を高める効果の方が強い
ということ。
完璧主義になると自己批判も多くなって思考がネガティブになってしまいます。なので、人間は誰でも失敗するものだと、セルフ・コンパッションで自分への優しさを忘れないようにしましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : The Relationship Between Self-Compassion and Well-Being: A Meta-Analysis