不確実性を嫌う人ほど、少しのことでもサービスに不満を感じてしまうという研究
将来に何が起こるのかを予測することは、時代の変化が加速するとともに難しくなっています。ITの急速な進歩やコロナの流行などにより、1年後の将来を当てることすら非常に難しいですよね。
そして、人は将来が不確実で予測できないことを不安に思うため、不確実性を嫌って避ける傾向があります。しかし、その不確実性を避けるレベルは人や文化によっても違うもので、起業して不確実な世界に飛び込んでいく人もいれば、公務員や大企業の社員として安定を取る人もいます。
そこで本稿では、この不確実性を避ける度合いの強さに関して
- 不確実性を避ける人ほど、商品やサービスの満足度が低下しやすいのでは?
ということを調べてくれたスタンフォード大学の研究(*1)を見てみましょう。
不確実性とサービスの満足感
人がサービスに満足感や不満を感じる背景には
- サービスへの期待がある
- サービスを受けて経験する
- 期待と経験のギャップがサービスの満足感を決める
というステップがあります。サービスが期待以上であれば満足するし、サービスが期待を下回っていれば不満を感じるという、まあ当たり前のことですね。
それでは、なぜ不確実性を嫌う人ほどサービスの満足感が低下しやすいのかというと、不確実性を嫌う人ほど少しのサービスの欠陥に過剰に不満を感じてしまうことがか考えられるからです。元々、不確実性が嫌いな人は、ルールや規則などを多く作り、期待通りの結果が得られることを好みます。そのため、規則を重視する人は、電車が1分でも遅れると不満を感じたり、接客の態度が少し悪かったりと、ルールや規則に沿った期待通りの結果が得られないと過剰に反応しやすいんですね。
実験:不確実性を嫌う人のサービスの満足感
スタンフォード大学の研究では、不確実性を嫌う人ほどサービスに満足しにくいのが本当かを調べるために、303人の顧客を対象にデータの分析を行っています。
これらの303人はスペイン・ドイツ・スウェーデンの3つの国から来た顧客となっています。この3つの国はそれぞれ文化的に不確実性を避ける傾向が違うので、それが顧客のサービスの満足感にどのように影響するのかを調べたわけですね。
結果:3カ国と不確実性を避ける傾向
まず3カ国で不確実性避ける傾向のスコアがどのように違うのかというと
- スペインで2.51
- ドイツで2.11
- スウェーデンで1.29
となっています。
スコアが高いスペインの方が不確実性を避ける傾向が強いということですね。
結果2:サービスの満足感
続いて、サービスの満足感の結果を見てみると
1(満足) | 2 | 3 | 4 | 5(不満) | |
スペイン | 19人 | 20人 | 0人 | 23人 | 41人 |
ドイツ | 32人 | 32人 | 24人 | 15人 | 0人 |
スウェーデン | 46人 | 37人 | 14人 | 0人 | 0人 |
となっています。表を見れば明らかなように
- 不確実性を避ける傾向が強いほど、サービスへの満足感も低い傾向があった
ということが分かります。不確実性を避ける傾向が最も強いスペインでは5(不満)を選ぶ人が一番多く、文化の違いで結構な差が出ていますね。
今回の研究には日本は含まれていませんが、日本人は時間に厳しかったり、起業が少なく安定的な職に就く人が多かったりと、ルールや規則にきっちりと従うことを大切にする傾向が強い方だと思います。なので、日本人は不確実性は嫌いな傾向が高いことが予想され、日本でサービスをするならきっちりと客の期待に応えることが大切になるでしょう。
まとめ
本稿では「不確実性を避ける傾向とサービスの満足感」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 不確実性を避ける人ほど、ルールや規則に沿って期待通りの結果を得ることを好むので、少しの欠陥でもサービスの満足感が低下しやすい
ということ。
完璧主義が幸福感を低下してしまうことがあるように、多少のルーズさは満足感や幸福感を高める上で大切なのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]