【選択の心理学】ちょっとした後悔が選択をリスキーにしてしまうという研究
人生は選択の連続で、今朝は何を食べようから、仕事を転職するべきかまで、一つ一つの選択が人生の方向を決めていきます。賢い選択を続けられれば、自分の人生はどんどんと良い方向へ向かっていくわけですね。
しかし、心理学の研究では、ちょっとした刺激や心理状態の変化で選択の確率が左右されること分かっています。例えば、悲しい時と嬉しい時で選択の傾向が違ったり、内容は同じなのに選択肢の文章を少し変えるだけで選ばれやすさが変わったりと、人は様々なバイアスを受けて意外と賢い選択ができていないんですね。
そこで本稿では、こうした選択のバイアスを避けるためにも、
- 選択に失敗した後悔を感じているときには、リスクが高い選択を取りやすくなってしまうのか?
について調べてくれた研究を見てみましょう。
実験:ギャンブルとリスクテイク
この研究(*1)では、合計で93名の参加者を対象に、ギャンブルゲームを実施しています。このゲームでは2つのボックスが表示されて、その中にはそれぞれ賞金が隠されています。例えば、
- 1つ目のボックスは+5ドル、2つ目のボックスは+10ドル
- 1つ目のボックスは−5ドル、2つ目のボックスは−10ドル
といった感じでボックスの中にはマイナスの賞金も含まれていたりします。
参加者は中身が見えない状態でどちらのボックスを開けるのかを選択するので、確率としては50%:50%です。そして、ボックスを一つ選んだら、もう一方のボックスに何が入っていたのかも見れるようになっています。これは自分が選んだボックスが成功だったのか、失敗だったのかを明確にして、参加者に後悔の感情を持ってもらうためです。
そして、参加者は次のゲームのボックスをリスクの高いものにするか、低いものにするのかも選べます。
- リスクの高いボックス
1つ目のボックスが+20ドル、2つ目のボックスは−10ドル
のように、損失のリスクがあるけど大きな利益が得られる選択
- リスクの低いボックス
1つ目のボックスは0ドル、2つ目のボックスは+10ドル
のように、負けても現状維持はできる選択
こうしたボックスの選択により、前の選択で後悔しているときにリスクの高いボックスを選びやすいのか?が分析できるわけですね。
結果:選択の後悔とリスクの取り方
早速結果を見てみると、
- ボックスの選択に失敗した人は、不快感をより強く感じていた
- リスクの低い選択で失敗した人は、次のゲームでリスクの高いボックスを選びやすかった
- リスクの高い選択で失敗した人は、次のゲームでリスクの低いボックスを選びやすかった
ということ。
つまり、リスクの低い選択のちょっとした後悔の後は、それを取り戻そうとリスクの高い選択をしやすい。しかし、リスクの高い選択で失敗した大きな後悔の後では、それ以上はリスクを取らなくなるということですね。
負けを取り戻そうとしてどんどんと負けが膨らんでいって、どこかで大負けして絶望を感じるという、ギャンブルや株取引である典型的な失敗パターンもこの選択の心理が説明できますね。
まとめ
本稿では「失敗の後悔とリスクテイク」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- ちょっとした後悔の後では、それを取り戻そうとリスクを取りやすくなる
- 大きな後悔の後では、リスクを避けて安全をとるようになる
ということ。
ギャンブルに限らずにちょっとした選択で失敗した後悔を感じているときは、それを取り戻そうとして下手にリスクを取らないように注意をしましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Effects of experienced regret on risky decision making are dependent on risky degree