フロー状態に入ると実際にパフォーマンスは上がっているのか?
「フロー」とは心理学の用語で、目の前のタスクに没頭するような高い集中状態のこと。スポーツでは「ゾーンに入る」と言うこともあります。
もちろんフローはスポーツだけのものではなく、勉強、仕事、音楽や芸術活動など、様々な活動で入ることができます。実はプライベートな時間よりも、仕事の時間の方が、人はより多くフローに入っているということも分かっています。フローは何か挑戦するようなタスクで起きやすいんですね。
そして本稿で注目するのは
- フロー状態に入ると、実際問題タスクのパフォーマンスは向上しているのか?
という点について。フロー状態では集中力が高まるのでパフォーマンスが向上するのは当たり前のように思えますが、意外とこの点をしっかりと検証した研究は少ないんですね。
フローとタスクのパフォーマンス
エクセター大学の研究では、フローとタスクのパフォーマンスの関係を実験した22件の研究結果をメタ分析でまとめています。
これらの研究では、
- フロー状態に入ることで、スポーツ(マラソンを中心に、サッカー、バスケなど)のパフォーマンスは向上するのか?
- フロー状態に入ることで、コンピュータゲームのパフォーマンスは向上するのか?
の2点を分析しています。
どちらの集中力を必要とするタスクではありますが、スポーツが身体的なパフォーマンスなのに対し、コンピュータゲームは頭脳的なパフォーマンスとなっているのがおもしろいですね。
結果:フローでパフォーマンスは上がるのか?
早速結果を見てみると、
- フロー状態では、スポーツのパフォーマンスが効果量0.32ほど向上していた
- フロー状態では、コンピュータゲームのパフォーマンスが効果量0.30ほど向上していた
ということ。
どちらのタスクでも効果量0.30ほどで、小〜中程度のパフォーマンス向上効果が得られています。体操のような一発勝負のスポーツでは極限の集中状態が重要になりそうですが、マラソンでは集中状態はそこまで大きくパフォーマンスに影響しなそうな気もするので、これくらいが妥当なのかもしれませんね。
フローの構成要素
最後にフロー体験を生むための3つのポイントと、フロー体験の6つの特徴をまとめておきます。
フロー体験の3つのポイント
- 自分のスキルとタスクの難易度がちょうど良いバランスになっている
- ゴールが明確に決められている
- 行動の結果がすぐフィードバックされる
フロー体験中の6つの特徴
- 行動を意識が一致している
- 集中力が一つのタスクに向いている
- 自分でコントロールしている感覚がある
- 自意識がなくなる
- 時間感覚が歪んで、時間があっという間に過ぎたように感じる
- 活動自体に価値を感じている
まとめ
本稿では「フロー状態では実際にパフォーマンスは向上するのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- フローに入ると、スポーツやゲームのパフォーマンスが効果量0.31ほど向上する
ということ。
フローに入ることはスポーツの試合などの大切な場面で特に重要ですが、毎日の練習でフローに入れることも、実力アップのためには大切です。なので、日々の練習の難易度と目標の設定や、練習成果のフィードバックの確認などを工夫して、フローに入りやすくすると良いでしょう。
[参考文献]
*1 : A systematic review and meta-analysis of the relationship between flow states and performance