ネガティブな感情を抑える最も良い方法は何か?心理学が教えてくれる6つの方法を比較してみた研究
自分の感情をコントロールする力は人生においてとても大切な能力です。
特に不安や落ち込みといったネガティブな感情をうまく抑えることができると、様々な側面で良い効果が得られます。
例えば、
大きな仕事で不安を感じても集中力を落とさずに仕事に取り組めたり、
試験で失敗しても早く立ち直って次へ進めたり、
ネガティブなときもやけ食いとかすることなく健康的でいられたり
とかいう感じで、感情をコントロールするスキルが高い人は
- 身体的にもメンタル的にも健康
- 仕事のパフォーマンスが高い
- 学業の成績も良い
- 人間関係もうまくいく
ことが分かっているんですね。
そこで本稿では、ネガティブな感情をうまくコントロールするのにはどうすればいいのかを心理学の研究(*1)を参考にお話ししたいと思います。
ネガティブな感情を制御する6つの戦略
ネガティブな感情をうまくコントロールするにはどうすればいいのか?という問題については心理学の研究が進んでいて、やった方が良い3つの戦略とやってはいけない3つの戦略が分かっているんですね。
やった方が良い3つの戦略
①リアプレイザル
リアプレイザルは再評価という意味で、ネガティブな感情の解釈をもっと良いものに変えてあげようという戦略です。
例えば、仕事にプレッシャーを感じている人は、プレッシャーは心を押しつぶす悪いものという考えを捨てて、適度なプレッシャーがあることでパフォーマンスを上げてくれるいいものと感情の解釈を変えるようなことです。
②問題解決
この戦略はネガティブな感情の原因を解決するために行動を起こすことを中心にした方法です。感情をコントロールしようとするのでなく、その原因を解決しようというわけですね。
そもそもネガティブな感情に落ち込みやすい人は、問題解決のスキルが低い人が多く、ネガティブの発生源をそのままにしてしまう人が多いということ。なので、この戦略を行うことで問題解決のスキルを高めることができるので、今のネガティブな感情を解決するだけでなく、将来の起こりうる問題にも対処していく能力がつくというメリットがあるんですね。
③アクセプタンス
アクセプタンスは受け入れるという意味で、感情に対して良い悪いを判断せずに受け入れてあげる戦略になります。ネガティブな感情を感じたときに、そのネガティブな感情は悪いものだと自分を責めるのでなく、客観的に自分はこんな感情を感じているんだなと受け入れてあげるわけですね。
Googleが取り入れたりしていて最近よく話題に上がるマインドフルネスなんかもこのアクセプタンス戦略にあたります。
やっていはいけない3つの戦略
④抑制
これから5分間シロクマについて絶対に考えないようにしてくださいと言われると、かえってシロクマが頭から離れなくなってしまいますよね。これはシロクマ効果と言われる心理学で有名な効果で、考えや感情を抑えようとすると、むしろそれらの感情に注目して強くなってしまうんですね。
なので、ネガティブな感情も押さえつけようとするほど、心の中で強く呼び起こされてしまうわけです。ネガティブな感情は抑制しようとするのでなく、受け入れて自然と静まるのを待つ方がいいということですね。
⑤回避
回避はネガティブな感情からできるだけ逃げようとすることです。
例えば、大きな仕事に不安を感じているとして、その仕事を回避して後回しにしてしまうようなことですね。
回避の悪いところは、その問題から逃げれば逃げるほど、自分の中で苦手意識であったりネガティブな感情が強くなってしまうことなんですね。
もちろん不必要なストレスなどは無くした方がいいと思いますが、中にはしっかりと向き合わなければいけないネガティブもあるというわけですね。
⑥反芻思考
反芻思考はネガティブな感情を何度も何度も繰り返して考えてしまうことです。
何度もネガティブな感情を思い起こしてしまうことで、その感情が薄れていくことなく、心の中に残り続けてしまうわけですね。
なのでネガティブな感情は抑えようとしても、うじうじと何度も思い出してもダメで、受け入れて自然と消えるのを待つのが良いということです。
6つの戦略はどれだけネガティブな感情に影響するのか?
これらの6つの戦略がどれだけネガティブな感情に効果があるのかを確かめてくれたのがイェール大学の研究(*1)になります。この研究では114件の研究から得られた241個の効果量のデータをメタ分析でまとめてくれています。
ネガティブな感情の指標としては次の4つを扱っていて
- 不安
- 落ち込み
- 摂食障害(拒食症や過食症など)
- 物質使用障害(薬物やアルコールへの依存症など)
これらに対して、先の6つの戦略がどれだけ効果があるのかを調べてくれています。
どの戦略が有効なのか?
その結果をまとめたものが次の表となっています
不安 | 落ち込み | 摂食障害 | 物質使用障害 | |
①リアプレイザル | −0.13 | −0.17 | −0.05 | −0.08 |
②問題解決 | −0.27 | −0.33 | −0.29 | |
③アクセプタンス | −0.25 | −0.20 | 0.00 | |
④抑制 | 0.29 | 0.36 | 0.36 | |
⑤回避 | 0.37 | 0.48 | 0.18 | 0.26 |
⑥反芻思考 | 0.42 | 0.55 | 0.26 | 0.21 |
マイナスの値はネガティブな感情を減らすことができていて、逆にプラスの値はネガティブな感情を増幅してしまっているという意味です。(太字は統計的に有意であるという意味)
この表から読み取れることは
- リアプレイザル、問題解決、アクセプタンスはネガティブな感情を抑制するのに有効な傾向がある
- 中でも問題解決はネガティブな感情を抑制する効果が高い!
- 抑制、回避、反芻思考はネガティブな感情を増幅してしまう傾向がある
- 悪い効果は反芻思考>回避>抑制の順に大きい
ということ。なのでネガティブな感情に対処するのに一番おすすめな方法は、問題解決のために行動すること!と言えますね。
まとめ
本稿では「ネガティブな感情に対処するための6つの戦略」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- ネガティブ感情に効くのはリアプレイザル/問題解決/アクセプタンス
- 逆にやってはいけないのは抑制/回避/反芻思考
- 特にネガティブな感情を一番効果的に対処するには、問題解決のために行動してみることが大切!
ということですね。
問題解決の行動が大切ということで、まずは自分にできることでいいので何か一つでも行動を始めることが良さそうですね。寝る前に明日は問題解決のためにこの行動だけしようと決めてあげると、不安が減って睡眠の質が向上するという話もあるので、問題解決のための行動を考えること自体もいいのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1: Emotion-regulation strategies across psychopathology: A meta-analytic review.