孤独感があると日中のパフォーマンスが低下してしまうという研究
本稿のテーマは「孤独感」です。
仲間外れにされているような疎外感を感じてしまったり、頼れる仲間がいない不安感を感じてしまったりと、孤独感はメンタルにとって悪いもの。それで、メンタルが悪化すれば、活力も失われてパフォーマンスも低下してしまうものです。
そこで本稿では、
- 実際に孤独感は日中の活力の低下に影響してしまうのか?
をみていきましょう。
孤独感と進化
人間は狩猟採集で暮らしていた頃から集団で生活を行なっていました。一つの集落の中には、狩りに行く人もいれば、果物を取りに行く人もいたりと役割分担をして暮らしていました。また、狩りを行うのにもチームを組んで集団で協力して獲物を獲得していたわけです。
つまり、進化の観点から見ると、孤独であることは本来の人間の姿とは違うもので、個人の生存を脅かすことだったんですね。例えば、夜に寝るときには、仲間が周りを見張ってくれれば安心して眠れますが、孤独であればクマに襲われる可能性にビクビクしながら眠らないといけませんよね。
こうした背景もあって、孤独であることは恐怖感や不安感につながってしまうメンタルに悪い感情だと考えられています。実際に、孤独感が強い人ほど幸福感が低い傾向があるみたいなデータもあるんですね。
孤独感と日中のパフォーマンス
それで、シカゴ大学らの研究(*1)が調べてくてたのが
- 孤独感が強いと、睡眠の量や質が低下したり、日中の活動でパフォーマンスが低下してしまったりするのでは?
ということです。
この215人の成人を対象に実験を行なっていて、3日間続けて
- 孤独感
- 日中の機能障害(疲労感や眠気、エネルギー切れなど)
- 日中の気分の落ち込み
- 睡眠時間
などを測定したんですね。
そしてこれらのデータから
- 孤独感がその日の睡眠時間や、翌日の機能障害にどのように影響するのか?
といったことを分析してくれています。
結果①:孤独感の悪影響
それで結果としてどのようなことが分かったのかというと、
- 孤独感が強い人ほど、日中の疲労感や眠気が強い傾向があった
- 孤独感が強い人は、睡眠時間は変わらなかったが、ベッドの中で起きている時間が長かった(なかなか寝付けなかったり、夜中に起きてしまったりと睡眠の質が低下していた)
ということです。やはり、孤独感があると活力が低下してしまうようで、日中の機能障害が増えてしまうみたいなんですね。また、狩猟採集時代に仲間が見守ってくれていないと安心して眠れなかったように、孤独感を感じていると睡眠の質も低下してしまうということです。
結果②:翌日への影響
それで3日間取得してデータから翌日への影響を分析した結果によると
- 孤独感は翌日の疲労感や眠気にもつながっていた
- さらに、日中の疲労感や眠気が翌日の孤独感にもつながっていた
ということ。
これがどういう意味なのかというと、孤独感を感じると翌日の活力が低下してしまい、さらにこの活力の低下が孤独感を高めてしまうという負のループに陥ってしまう危険があるということです。うーん、なかなか孤独感はやっかいなものみたいですね。
結果③:気分の落ち込み
この研究では気分の落ち込みの測定もしています。これがなぜなのかというと、孤独感が高い人にはうつ病などの気配がある人が多くて、それが原因で孤独感と日中の疲労感や眠気に相関が出てしまっている可能性があるからですね。
それで、気分の落ち込みを考慮して分析して結果を見ると
- 気分の落ち込みを差し引いても、孤独感と日中の疲労感や眠気には有意な相関があった
ということ。つまり、気分の落ち込みとは関係なしに、孤独感を感じれば日中の疲労感や眠気を感じやすくなってしまう確かな結果が確認されたわけですね。
まとめ
本稿では「孤独感と日中のパフォーマンス低下」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 孤独感を感じると日中の疲労感や眠気を感じやすくなってしまう
- 孤独感は睡眠の質を低下してしまう
- 逆に日中の疲労感や眠気も孤独感を強めるので、一度孤独になると負のループに陥ってしまう可能性がある
ということですね。
幸福感の研究でも良好な人間関係は大切な要素だと分かっています。人間は昔から集団で生きてきた動物ということで、孤独感を感じやすい人は、家族や友人との時間を増やしたり、コミュニティへ参加して所属感を得るなどすると良いのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Loneliness Impairs Daytime Functioning But Not Sleep Duration