スマホをいじるだけでも運動機能は低下してしまう?脳の疲れと運動に関する2つの研究

最終更新日

Comments: 0

人は疲れが溜まってくると運動のパフォーマンスが低下するもので、パワーが落ちたり、持久力が低下したり、パスのミスが多くなったりします。

そして、この疲れにも実は2つの種類があって

  • 身体的な疲労
  • 精神的な疲労

に分けられます。

身体的な疲労は乳酸が溜まって体の動きが鈍くなったりといった、まさに体の疲れそのものです。一方で精神的な疲労とは、難しい数学の問題を解いたときにどっと疲れるような脳の疲労のことを言います。

運動はこの2つの疲労の両方の影響を受けてしまうので、脳が疲れるだけでも運動のパフォーマンスが下がってしまう可能性があるんですね。

そこで、本稿では2つの研究を参考に、精神的な疲労と運動の間にどんな関係があるのかを見ていきましょう。

研究1:スマホをいじるだけでも運動のパフォーマンスが落ちてしまう?

一つ目の研究(*1)では、

  • スマホをいじるだけでも脳が疲れて運動のパフォーマンスが落ちてしまうのではないか?

ということを調査してくれています。

この研究では16人のフットボール選手を集めて、半分の人にはスマホアプリで30分間遊んでもらって、もう半分は何もしないでいてもらっています。そして、その後に運動テストを行って、パフォーマンスに差が出るのかを調べたんですね。

この実験で使用したスマホアプリは”Brain it on”というパズル要素のあるゲームアプリになっています。

そして、運動テストは2種類のテストを行っていて

  • Yo-Yo持久力テスト
    20mシャトルランニ似た持久力テスト
  • ラフバラー・サッカーパステスト
    サッカーのショートパスをどれだけミスなく出せるかのテスト

で持久力と技能面の2つのパフォーマンスを測定しています。

実験の結果

それで、実験の結果がどうだったのかが次の2つのグラフ。

左のグラフがYo-Yo持久力テストの結果で、運動前にスマホで遊んだグループ(黄色の棒グラフ)の方が、持久力の結果が低くなってしまっていることがわかります。

右のグラフがサッカーパステストの結果で、このグラフは縦軸がミスした時のペナルティ時間なので、棒グラフが低い方が精度良くパスができたということになります。グラフを見るとスマホで遊んだグループ(黄色)の方がペナルティ時間が高く、パスの精度が悪くなってしまっていることがわかります。

つまり、この2つの結果から

  • 運動前にスマホをいじるだけでも、運動のパフォーマンスが低下してしまう可能性がある!

ということが分かったわけですね。

ただし、この研究はサンプルサイズが小さいのと、スマホでどのアプリを使うのかによっても結果が変わる可能性もあるので、そこら辺はご注意下さい。

研究2:プロとアマチュアで違いはあるのか?

2つ目の研究では

  • 運動のプロとアマチュアで精神的な疲労が運動パフォーマンスを低下させる効果に違いがあるのか?

を調べてくれています。

この研究では、11人のプロのサイクリスト(自転車競技選手)と、9人の趣味で自転車に乗る人を集めています。

そして精神的な疲労を与えるために、

  • 半分の人には30分のストループテスト
  • もう半分には10分の簡単な認知テスト

を行ってもらいます。

ストループテストとは、例えば画面上に「青」という文字が黄色で表示されて、文字の色の方(黄色)を即時に答えるテストです。これは意外と集中力が必要なタスクで、30分間もやれば脳はどっと疲れるわけですね。

そして、精神的な疲労が付加された後で、各グループの人は20分間に自転車をどれだけ漕げるかの運動テストを行ってもらいます。脳の負担の大きいストループテストを行った人と、簡単な認知テストを行った人で運動のパフォーマンスに差が出るのかを測定したわけですね。

実験の結果

結果としてどのようなことが分かったのかというと、

  • プロの方がストループテストの正解数が多かった!
  • アマチュアは精神的な疲労が大きくなると、運動のパフォーマンスが低下した!
  • プロは精神的な疲労が大きくなっても、運動のパフォーマンスは低下しなかった!

ということなんですね。

プロの方が精神的な疲労への耐久力が強いためか、ストループテストでも運動でもアマチュアよりもパフォーマンスが良かったようですね。プロは厳しい練習に耐えたり、食事や睡眠などの生活習慣を整えたりすることが必要なため、これにより自分をコントロールする力が高くなっているのかもしれませんね。

まとめ

本稿では「精神的な疲労と運動のパフォーマンス」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • スマホをいじるだけでも精神的に疲れて運動のパフォーマンスは低下してしまう可能性がある!
  • だけどプロのように精神力が強ければ、運動のパフォーマンスは精神的な疲れていても低下しない!

ということですね。

精神的な疲労は運動だけでなく、仕事や勉強のパフォーマンスも低下させてしまうので、運動を通じて精神力も鍛えられればいいですね!

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1: Negative effects of smartphone use on physical and technical performance of young footballers

*2: Superior Inhibitory Control and Resistance to Mental Fatigue in Professional Road Cyclists

Naoto

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

コメントする