お金に困ると寝不足と同じくらい仕事の生産性が低下してしまうという研究
仕事の生産性は集中力やモチベーション、人間関係、職場の環境などの様々な要因から影響を受けます。集中できる環境を作ったり、目標を決めてモチベーションを高めるなどして、これらの要因を生産性を向上させる側に活用できればいいのですが、それとは逆に意外な要因が作用して生産性が低下してしまうこともあります。
そして、カリフォルニア大学の研究(*1)によると、
- お金に困ってしまうと、仕事の生産性も低下してしまう!
という意外な関係が発見されていましたので、本稿ではその中身を見ていきましょう。
お金不足と仕事の生産性
この研究ではお金不足が仕事の生産性の関係を確認するために、インドで実験を行っています。なぜインドなのかというと、インドの農家の人は収穫に時期には収入が増えて豊かになるのに対して、収穫のない時期は収入が途絶えてしまって比較的貧乏になってしまうからです。しかし、農家の人は収穫がない時期に収入ゼロだとさずがにやっていけないので、これを補うために短期の仕事に出ることが普通になっているみたいです。そこで、この実験ではこの短期の仕事を利用してお金に困っている農家の人の仕事のパフォーマンスを測定したんですね。
そして、この実験では実際に408名が集められて2週間に渡って仕事を行ってもらっています。このときに参加者は給料の支払い方を変えて、いくつかのグループに分けられています。
- 5日目に給料の支払い予定日が知らされて、8日目にそれまでの給料支払われて、最終日に残りの給料が支払われるグループ
- 5日目に給料の支払い予定日が知らされて、9日目にそれまでの給料支払われて、最終日に残りの給料が支払われるグループ
- 初日に給料の支払い予定日が知らされて、最終日に給料の全額が支払われるグループ
上2つのグループは途中で給料がもらえるのが特徴で、途中で給料がもらえるとお金に少し余裕ができるので、残りの日数の仕事の生産性が向上することが期待できるわけですね。
そして、仕事の内容は葉っぱを縫い合わせて使い捨てのお皿を作る仕事になっていて、完成したお皿の数が仕事の生産性として測定されています。
結果①:お金と生産性の関係
実験の結果として、給料の半分を途中でもらった人にどんな変化があったのかというと、
- 途中で給料をもらった人は、仕事の生産性が5.3%向上した
- お金に困っている人ほど生産性の向上は大きく、お金にそれほど困っていない人にはあまり効果はなかった
という結果が得られています。
つまり、お金に困っている状態では仕事の生産性は低下してしまっていて、給料が入ってお金の悩みが和らぐと仕事の生産性が向上したわけですね。
ちなみに生産性が5.3%高まるというのは結構大きなインパクトのようで、夜の十分な睡眠と昼寝が生産性を向上させるインパクトや、ノイズや熱気のある環境で仕事をしたときに生産性が低下してしまうインパクトと同じくらいということです。お金が足りないだけで寝不足と同じ生産性低下と考えると、結構なインパクトだと分かりますね。
結果②:なぜお金は生産性に影響するのか?
この研究ではなぜお金が生産性に影響するのかのメカニズムについても、次のように分析してくれています。
- 早く給料がくれた雇用主の配慮に感謝して仕事を頑張るのでは?
→ 早く給料をあげると通知しただけでは仕事の生産性は上がらなかったので、その可能性は低い
- 雇用主は給料を本当にくれるという信頼が生まれたのでは?
→ それを確かめるために8日目と9日目で給料をもらえる日にちをグループ分けした。9日目に給料をもらった人は、8日目に給料をもらった人を見るだけでも、雇用主が本当に給料をくれるという信頼が生まれるはず。しかし、実際に9日目に自分が給料をもらえるまで仕事の生産性は上がらなかったので、この可能性も低い。
- お金の悩みが集中力を阻害してしまったのでは?
→ 完成させた葉っぱのお皿の作業ミスを測定すると、確かにお金に困っている人ほどミスが多くて、集中力が低い傾向があった。さらに途中で給料をもらうと、それ以降これらのミスも減ったので、お金の悩みが集中力を阻害している可能性は十分あり得る
ということで、結論としては、お金が不足すると仕事の生産性が低下してしまう原因は、お金の悩みが無意識のうちに集中力を低下させてしまうから、みたいですね。
まとめ
本稿では「お金に困ると仕事の生産性が低下してしまう」というお話をしました
ポイントをまとめると
- お金が不足するとお金の悩みが無意識に集中力を低下してしまう!
- その結果として、お金不足が仕事の生産性も低下させてしまう!
ということですね。
お金の悩みによる集中力低下を防ぐために、少し貯金するなどして余裕を持つことが大切そうですね。この研究では仕事の生産性を測っていましたが、集中力の低下は仕事以外の様々な場面にも影響するので、それも怖いところですね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]