朝型と夜型の違いで、認知能力や学業成績はどのように差がつくのか？

何時に寝て何時に起きるのが良いかは、全員に共通してこの時間が良いと言えるものではなく、個人差があります。これはクロノタイプとも呼ばれていて、朝に集中力を発揮できる朝型タイプと、夜になるにつれて集中力が高まっていく夜型タイプの人がいるんですね。もちろん、きっぱりとこの２つのタイプに分けられるわけではなく、中間くらいの人や、やや夜型の人など、程度の問題でもあります。

仕事でも勉強でもパフォーマンスを高めたいのであれば、自分のクロノタイプにあった時間の使い方をすることが大切です。しかし、授業の時間や仕事の時間は自分で自由に決められない部分も多く、自分のクロノタイプと合わなくなってしまうこともあります。そうなると仕事や学業の成績が落ちてしまう可能性もあるわけですね。

そこで、本稿では

• クロノタイプの違いが認知能力や学業成績にどのように関係するのか？

を調べてくれたトリーア大学の研究を見てみましょう。

クロノタイプと認知能力・学業成績

クロノタイプは人による違いもありますが、同じ人の中でも年齢が変わると夜型になったり早起きになったりするものです。年齢によるクロノタイプの変化としては、幼少期は朝型、20歳近くになると夜型によって、50を過ぎるとまた朝方に戻るというパターンになっているということ。

それでトリーア大学の研究では、

• 朝型・夜型の違いで学業成績は変わるのか？
• 朝型・夜型の違いで認知能力は変わるのか？
• これらの関係に年齢は影響するのか？

を25件の研究データをメタ分析でまとめることで調べてくれています。

結果1：クロノタイプと学業成績

最初にクロノタイプと学業成績の関係を見てみると

• 朝型の人ほど学業成績は少し高い傾向があった(r=.16)
• 夜型の人ほど学業成績は少し低い傾向があった(r=−.14)

ということ。

何となくそうだろうなと思っていましたが、夜型の人の方が学業成績は低いようです。この理由としては、学校は朝早くからスタートするので夜型の人に不利である点や、夜型の人は睡眠不足になりがちで授業中に眠ってしまうことなどが多い点にあるのだろうと推測されています。

結果2：クロノタイプと認知能力

次にクロノタイプと認知能力の関係の結果を見てみると

• 朝型の人ほど認知能力はほんの少し低いする傾向があった(r=−.04)
• 夜型の人ほど認知能力は少し高い傾向があった(r=.16)

ということ。

面白いことに学業成績とは逆で、夜型の人の方が認知能力が高いという結果になっています。夜型の人が学業成績が低いのは頭が悪いわけではなく、ちゃんとパフォーマンスを発揮できていないだけのようですね。

今回の研究では夜型の人がなぜ認知能力が高いのかまでは解明されていませんが、研究者の推測するところでは、

• 夜型の人は邪魔の少ない夜の集中時間で頭をよく使っているから
• 夜型の人は時間に関して苦労することが多くて、それらに対処することで認知能力が鍛えられているから
• 明かりない時代の人間は夜型にはなり得ないので、夜を活用すること自体が進化的に新しいことだから

などが挙げられています。

結果3：クロノタイプと年齢

最後に年齢に関する結果を見てみると

• クロノタイプと学業成績の関係に年齢は関係しなかった
• クロノタイプと認知能力の関係は年齢が高まるほど強まった

ということ。

つまり、一般的には年齢が高くなるほど朝方になりがちですが、年齢が高いのに夜型の人がいたら、その人は認知能力が高い可能性が高いということですね。しかし、この結果に関しては、まだ十分なサンプル数とは言えないようなので、参考程度にするのが良いということです。

まとめ

本稿では「朝型・夜型の違いと認知能力・学業成績の関係」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

• 朝型の人は学業成績が少し高めだが、認知能力は少し低め
• 夜型の人は学業成績は少し低めだが、認知能力が少し高め

ということ。

これは朝型を目指そうとか、夜型を目指そうという話ではなく、大切なのは自分のクロノタイプにあった生活をすることでパフォーマンスが向上するということです。目覚まし時計をかけずに自然に寝て自然に起きる時間で大体のクロノタイプはわかると思いますので、自分のクロノタイプにあった集中時間を大切にしていきましょう。

以上、本稿はここまで。

[参考文献]

*1 : Chronotype, cognitive abilities, and academic achievement: A meta-analytic investigation