睡眠の質を上げる方法。食事・運動・カフェイン・昼寝を研究からまとめた
このブログでは睡眠に関する研究を49本紹介してきました。この記事では、その結論を「まず何をすべきか」の順に並べ直しています。各項目から元記事に飛べるので、気になったところを掘り下げてください。
最初に、この記事でいちばん印象に残った数字を置いておきます。
睡眠不足はネガティブな感情のリスクを41〜83%高める。しかしそれ以上に、幸福感のようなポジティブな感情を感じにくくするリスクを102%も高める。
睡眠不足というと「イライラする」ほうに目が行きがちですが、機嫌や気分への影響を調べた研究が示したのは、それ以上に嬉しいことを嬉しいと感じられなくなるということでした。睡眠は、悪い感情を防ぐより先に、良い感情を守るためのものかもしれません。
1. 睡眠不足が奪っていくもの
まず、何が起きるのかを押さえておきます。
- 食欲:高カロリー食品の好みは変わらないが、低カロリー食品に魅力を感じなくなる。たった一晩の睡眠不足でも食事の好みは変わります
- ダイエット:睡眠不足だと同じように減量しても脂肪が減りにくくなる。食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減ってしまいます
- 筋トレ:コンパウンド種目の最大筋力が落ち、成長ホルモンも減る。さらにトレーニングからの回復も遅れます
- 体の炎症:睡眠障害があると炎症が進む。ただし1日〜数日程度の睡眠不足では進みませんでした
この炎症の研究には、見落とされがちな指摘がありました。睡眠過多は、睡眠不足以上に炎症が進んでしまうのです。長ければ良いというものではなく、8時間以内に抑えるのが目安になります。
2. 「休日の寝だめ」は効くのか
平日に削って休日に取り返す。多くの人がやっている方法ですが、これを調べた研究の結果は少し残酷でした。
- 主観的な眠気や活力感は、休日の睡眠で十分に回復する
- しかし体内の生理現象レベルでは回復できていない
つまり「寝だめで回復した気がする」のは、本当に感覚だけの話だということです。ダイエットの研究でも、平日の睡眠不足を休日に補おうとしても悪影響は出てしまうという結果でした。感覚を信じず、毎日一定して確保するしかなさそうです。
3. 食事で睡眠は変わる
意外と効くのが食事です。カロリー制限とタンパク質の研究では、はっきりした差が出ました。
- カロリー制限とともにタンパク質の割合を20%以上に増やすと、睡眠の質が改善する
- カロリー制限をしても、タンパク質の割合が低いと睡眠の質は改善しない
- この効果は長期的にも持続する
地中海式ダイエットと睡眠を調べた研究でも、食事の質が高い人ほど睡眠時間が安定し、質も良いという結果でした。ポイントは、高タンパクな食事、野菜とフルーツを多く、質の悪い脂質は控えめに、お菓子は少なく。
食事・仕事・運動から睡眠を考えた記事では、寝る1時間以上前に高GIの食品を摂る、トリプトファンの多い食品を摂るといった具体策も紹介しています。
4. カフェインは何時まで
ここは明確な数字があります。カフェインを摂る時間を調べた研究によると、カフェインは寝る6時間前にはやめたほうが良い。
夕方以降のカフェインを調べた研究では、寝つきが悪くなるだけでなく深い眠りの時間そのものが減ってしまうことがわかっています。夜の仕事をカフェインでブーストするのは、短期的には効いても翌日のパフォーマンスを削る取引になりかねません。
逆に朝は有効です。同じ研究で、カフェインによる記憶力の向上は、脳がまだ完全に起きていない朝に効果が高いとされています。朝に弱い人ほど、朝のコーヒーには意味があるということですね。
5. 運動は効く。メンタルが不調なときほど
運動と睡眠の関係を調べた研究のポイントを整理すると、こうなります。
- 一時的な運動でも効果はあるが、効果は小さめ
- 習慣的な運動になると、睡眠の質がはっきり良くなる
- 有酸素運動でも無酸素運動でもよい
- タイミングは寝る3〜8時間前、運動時間は長めが良い
ただし注意点があって、オーバートレーニングになると逆に睡眠の質は下がります。やりすぎは逆効果です。
そしてメンタル不調時の運動を調べた研究では、不安や落ち込みで眠れないときにも運動の睡眠改善効果は高く、特にうつ状態に有効という結果でした。眠れないほど気分が落ちているときこそ、体を動かす価値があります。
6. 光は「時間帯」で意味が変わる
ブルーライトは悪者にされがちですが、実際は使う時間帯の問題です。
- 夜:脳を覚醒させて眠気を遠ざけてしまう。夜の認知パフォーマンスは上がるが、睡眠の質を削る諸刃の剣
- 日中:眠気の低下、ワーキングメモリの向上、脳の処理速度の向上が得られる
日中に眠いなら、むしろ日光などの光をしっかり浴びる。夜は避ける。この使い分けが正解です。
7. 寝る前30分をどう過ごすか
寝る直前の過ごし方については、効果が確認されているものが複数あります。
- 音楽:寝る前20〜25分、穏やかなリラックス向きの音楽を聴くと睡眠の質が改善
- ヨガのリラックステクニック:ストレスが軽減し、睡眠の質が向上。血圧や心拍数も若干改善
- 明日のToDoリストを書く:寝つきが良くなる。できるだけ多く、具体的に書くほど効果が高い
- 感謝の日記:ポジティブな感情が増えてネガティブな感情が減り、その結果として睡眠の質が上がる
プレッシャーで眠れない日にはToDoリスト、気持ちが荒れている日には感謝の日記、という使い分けができそうです。共通しているのは寝る前の30分をスマホ以外のことに使うという点ですね。
8. モノに頼る前に知っておきたいこと
- メラトニンのサプリ:寝つきが約7分早くなり、睡眠時間が約8分長くなる。依存性や副作用がないぶん使いやすいものの、効果は7〜8分程度と正直に言って弱めです
- 重いブランケット:安心感を高める効果がある。ただし人によっては効果が出ません。体に悪い影響はないので、試す価値はあります
メラトニンの数字を見てわかるとおり、サプリで得られるのは数分単位の改善です。ここまでに挙げた食事・カフェイン・運動・光の調整のほうが、はるかに効果が大きいと考えたほうがいいでしょう。
9. 昼寝は20分
昼寝については、時間の目安がはっきりしています。昼寝の長さと健康リスクを調べた研究の結果です。
- 30分までなら心血管疾患のリスクが低下する
- 45分を超えると心血管疾患のリスクが大きく高まる
寝起きの頭の働き(睡眠慣性)も考えると、20分以内がおすすめです。昼寝の前にカフェインを摂っておくと、ちょうど起きる頃に効いてきて寝起きがスムーズになります。
効果のほうは、記憶の定着だけでなく、午前中に学んだ知識の抽象化も促進することがわかっています。ただしこれは夜の睡眠をしっかり取ったうえでの話です。
10. 朝型・夜型は、半分は生まれつき
「早起きできない自分は意志が弱い」と思っている人に、遺伝の影響を調べた研究の数字を紹介します。
- 睡眠時間の46%が遺伝的要因、残り54%が環境的要因
- 睡眠の質の44%が遺伝的要因、残り56%が環境的要因
およそ半分は生まれつきということです。朝型と夜型を比較した研究でも、朝型は学業成績が少し高めで認知能力は少し低め、夜型はその逆という結果でした。どちらが優れているという話ではありません。大切なのは自分のクロノタイプに合った生活をすることです。
自分がどちらかを知るには、目覚ましをかけずに自然に寝て自然に起きる時間を見るのが手っ取り早い方法です。
11. 寝起きを良くする
起床直後の音楽を調べた研究では、起きてすぐ音楽を聴くと眠気が取れて脳も覚醒し、パフォーマンスが向上しました。ポイントは自分の好きな音楽であることで、好きな曲ほど効果が高くなります。目覚ましの音を好きな曲に変えるだけで試せます。
12. よくある思い込みを点検する
睡眠の専門家が挙げた俗説を前半・後半の2本にまとめています。
なかでも多くの人が当てはまりそうなのが「睡眠不足なら午後に昼寝で補えばいい」という思い込みです。ここまで見てきたとおり、昼寝は夜の睡眠の代わりにはなりません。
まとめ:どこから手をつけるか
効果の大きさと、始めやすさのバランスで並べるとこうなります。
- 1. 毎日一定の睡眠時間を確保する 寝だめは感覚だけの回復です。ここが土台
- 2. カフェインを寝る6時間前までにする 今日から無料でできて、効果がはっきりしている
- 3. 寝る前30分をスマホ以外に使う 音楽、ToDoリスト、感謝の日記のどれでも
- 4. 運動を習慣にする 一時的ではなく習慣にすると効果が大きい。寝る3〜8時間前
- 5. タンパク質を増やす 特にダイエット中は割合20%以上を意識する
- 6. 光を時間帯で使い分ける 日中は浴びる、夜は避ける
- 7. 昼寝は20分まで 夜の睡眠を削らない範囲で
- 8. サプリを検討する 1〜7をやったうえで、数分の上乗せとして
サプリや寝具から入りたくなりますが、数字を見るかぎり効果が大きいのは上のほうです。まずはカフェインの時間を変えるところからでも十分だと思います。
※本記事は学術研究の紹介であり、医療上の助言ではありません。不眠が続く場合や持病のある方は医師にご相談ください。研究結果は特定の条件下で得られたものであり、すべての人に同じ効果を保証するものではありません。
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