内発的動機付けのダークサイド。好きなことだけでは仕事はうまくいかない?

内発的動機づけとは

心理学ではモチベーションを内発的動機付けと外発的動機付けの2つに分ける考え方があります。

外発的動機づけは報酬や強制力といった外部の要因からくるモチベーションなのに対して、内発的動機づけはその活動自体が好きだという活動自体からもたらされるモチベーションになります。

この内発的動機づけは良い効果があって、研究によって内発的動機付けが高いほどタスクのパフォーマンスが高くなるということが分かっています。お金のために仕事をする人よりも、好きで仕事をしている人の方がパフォーマンスが高いというのは納得できますよね。

このような良い効果の発見もあって、職場や学校などの様々な場面で内発的動機づけを高めることが大切と言われるようにもなっていきました。「好きなことだけして生きていく」はまさに内発的動機づけに従って生きていくということになりますね。

内発的動機付けのダークサイド?

この内発的動機づけに実は悪い効果もあるのではということを検証してくれたのがジヘ・シン博士とアダム・グラント博士の研究(*1)です。アダム・グラント博士は「Give and Take」などの書籍でも有名な博士ですね。

この研究では内発的動機づけはタスクのパフォーマンスを上げてくれるけど、他の別に好きでないタスクのパフォーマンスは逆に下げてしまうのではないか?ということを調べてくれています。

なぜこんなことが起こり得るのかというと、すごく甘ったるい飲み物を飲んだ後に、普通の甘さの飲み物を甘く感じなくなってしまうように、特定のタスクを好きで楽しいと感じるほど、他のタスクがつまらなく感じてしまうからということ。つまり、新しいゲームにハマっているときは、他のゲームが魅力的に見えなくなったり、まして勉強みたいなつまらないタスクは手がつかなくなってしまうようなものですね。

そしてこの研究では2つの実験により、この内発的動機付けのダークサイドを検証してくれてます。

実験1:セールスマンのパフォーマンス

一つ目の実験ではデパートメントストアのセールスマン105人の内発的動機づけとパフォーマンスの関係を調べています。

このストアの店員は

  • 販売
  • 在庫管理
  • 商品の勉強
  • 商品の整列やディスプレイの変更
  • 商品の返品や交換
  • 他の店員のサポート

といった6つの仕事を主に行っているということで、これらのそれぞれのタスクに対する内発的動機づけと、各タスクの上司のパフォーマンスの評価を調べています。特定の一つのタスクの内発的動機づけが高い人は、他のタスクのパフォーマンスが下がっていないかを調べたわけですね。

その結果が次のグラフとなっています。

横軸が一番内発的動機づけが高かったタスクの内発的動機付けの大きさで、縦軸が他のタスクのパフォーマンスを示しています。グラフの曲線の下がり具合を見れば分かるとおり、特定のタスクの内発的動機づけが高くなるほど、他のタスクのパフォーマンスが低下してしまっていることがわかります。内発的動機づけが低すぎてもパフォーマンスは下がってしまっているので、ちょうど良いレベルがあるということですね。

実験2:つまらないタスクと面白いタスク

続いての実験では255人の学生を対象にした実験で、各学生には2つのタスクを行ってもらいます。

一つ目のタスクは内発的動機付けの高低差を作るためのタスクとなっていて、次の3種類のタスクのどれかを行ってもらいます

  1. 内発的動機付け低めグループ
    YouTubeで数学の講座の動画を10個探してもらう
    その後、その中の一つを視聴してもらう(動画は自分で選べない)
  2. 内発的動機付け中程度グループ
    YouTudeでライフハックの動画を10個探してもらう
    (数学よりから実用的で楽しい)
    その後、その中の3つから1つを選んで試聴してもらう
  3. 内発的動機付け高めグループ
    YouTubeで自分の好きな動画を10個探してもらう
    その後、それらの中から一番みたいものを選んで試聴してもらう

そして2つ目のタスクは、一つ目のタスクで調整された内発的動機づけが与えるパフォーマンスへの影響を図るためのタスクで、2種類のタスクが用意されています。

  1. 面白いタスク
    Little Archemyというオンラインゲームを行ってもらう
  2. つまらないタスク
    電話帳から特定の名前の電話番号を書き出してもらう

これらの1つ目のタスク3種類×2つ目のタスク2種類で合計6個のグループに分かれたわけですね。

そして、これらの結果からわかったことは、

  • 2つ目がつまらないタスクの場合は、一つ目の内発的動機づけが高いとパフォーマンスが下がってしまった!
  • しかし、2つ目が面白いタスクの場合は、1つ目が内発的動機づけが高くてもパフォーマンスは低下しなかった!

ということ。つまり、特定のタスクの内発的動機づけが高いと他のタスクのパフォーマンスが低下してしまうが、このパフォーマンスの低下が起こるのはつまらないタスクのみということですね。

まとめ

本稿では内発的動機づけのダークサイドのお話をしました。

ポイントをまとめると

  • 内発的動機づけは好きなタスクのパフォーマンスを上げてくれる
  • 内発的動機づけには他の好きでないタスクのパフォーマンスを下げてしまう悪い効果もある
  • 好きなタスク同士ではこのパフォーマンスの低下は起きない

ということですね。

仕事は好きなタスクも別に好きでないタスクも混じっているのが普通ですから、内発的動機づけは単純に高めれば良いというわけでもないみたいですね。特定の好きなタスクばかりやらせて内発的動機づけを高めると、他のタスクのパフォーマンスが低下してしまうので、そこら辺はよく考えながらバランスよく内発的動機づけを高めていく必要があるということだと思います。


[参考文献]

*1: BORED BY INTEREST: HOW INTRINSIC MOTIVATION IN ONE TASK CAN REDUCE PERFORMANCE ON OTHER TASKS

Naoto

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