テストのプレッシャーに弱い人はエクスプレッシブ・ライティングで点数が上がるという研究

テストにはプレッシャーがつきもので、焦って頭が真っ白になってしまったり、ケアレスミスをしてしまったりと、プレッシャーがテストの点数に影響してしまうことがあります。特にプレッシャーに弱い人ほどこの影響を受けやすく、受験であったり、仕事で必要な資格の試験など、重要な試験で実力を発揮できないことがあります。

そこで、シカゴ大学の研究(*1)が

  • エクスプレッシブ・ライティングでテストのプレッシャーを和らげることができるのでは?

ということを実験してくれていましたので、本稿ではその中身を見ていきましょう。

エクスプレッシブ・ライティングとテスト

エクスプレッシブ・ライティングとは、不安を和らげる方法として有名なものの一つで、

  • 自分が不安に思っていることについて、自分の感情や考えをありのままに書き出してみる

というものです。

例えば、「面接を前にして自分は緊張してしまっている。これは第一志望の会社の面接だから絶対に失敗したくないと思っている。面接の練習はたくさんしてきたけど、想定外の質問がされたときのことを考えると、うまく切り返せるか不安だ」みたいな感じで、時間を10分とか決めてとにかく書き出してみるわけですね。

一見すると、ネガティブな感情にばかり目を向けてしまうので不安が増してしまうようにも思えますが、これが逆で、不安を書き出すことで心の中で受け入れるができて、落ち着きを取り戻せることが研究により分かっているんですね。

テストのプレッシャーに使えるのか?

それで、シカゴ大学の研究では、

  • このエクスプレッシブ・ライティングでテストへの不安を軽減すればテストの点数が向上するのでは?

ということを実験して調べてくれたんですね。

どんな実験をしたのかというと、20人の大学生を集めて、数学のテストを2回受けてもらいます。1回目のテストは普通に受けてもらうのですが、2回目のテストの前には半分の人には座って待っててもらって、もう半分の人には10分間だけエクスプレッシブ・ライティングを行ってもらっています。

ちなみに2回目のテストにはプレッシャーを与えるために工夫がされていて

  • 高得点を取ったらお金をあげるように伝えた
    (報酬をもらうためには失敗できないというプレッシャー)
  • お金は自分の点数だけでなく、ペアになった人との合計点でももらえると伝えた
    (ペアの相手ためにも失敗できないというプレッシャー)

ということなんですね。

結果

それで1回目と2回目のテストの正解率の変化が次のグラフとなっています。

点線が10分間座っていた人の正解率の変化で、実線がエクスプレッシブ・ライティングを実施した人の正解率の変化です。

このグラフから分かるのは

  • 10分間座っていた人は、プレッシャーの強い2回目のテストで、正解率が12%下がってしまった
  • 10分間エクスプレッシブ・ライティングをした人は、2回目のテストで正解率が5%向上した

ということ。つまり、エクスプレッシブ・ライティングでプレッシャーによるテストのパフォーマンス低下を防いで、正解率が向上できるということが確認されたわけですね。

ただし、注意点もあって、

  • そもそもプレッシャーをあまり感じていない人は、エクスプレッシブ・ライティングを行なっても効果がなかった

ということなので、もともとプレッシャーに強い人にとっては必要のないテクニックかもしれませんね。

実験②

先ほどの実験は研究室に生徒を集めて行なった擬似的なテストでしたが、この研究ではエクスプレッシブ・ライティングが現実のテストでも効果があるのか確かめてくれていて、

  • 中学3年生の実際の学期末テストでエクスプレッシブ・ライティングと取り入れたらどうなるのか?

を確かめてくれています。

その結果が次の通りで

左のグラフの実線を見ると分かるのが、エクスプレッシブ・ライティングを取り入れた最終テストで、正解率がグッと6%くらい向上しているということです。やはりエクスプレッシブ・ライティングは実際のテストでも有効だということですね。

ちなみに、左のグラフはテストで不安を感じやすい人の結果で、右のグラフがテストで不安を感じにくい人の結果となっていて、右のグラフではこの正解率の向上は見られません。つまり、エクスプレッシブ・ライティングはそもそもプレッシャーを感じにくい人には効果はないということも現実のテストで再現したわけですね。

まとめ

本稿では「テストのプレッシャーにエクスプレッシブ・ライティングが効くのか?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • テスト前に自分の感じている不安について10分ほど書き出すことで、テストの正解率が5%ほど向上する!
  • ただし、この効果はプレッシャーによる実力低下を防ぐものだから、プレッシャーを感じていない人には効果はない!

ということですね。

プレッシャーを感じていない人には効果がないということですが、受験などの大きな試験になると、全くプレッシャーを感じないという人の方が珍しいでしょう。10分間で5%もテストの点数が上がるのであれば、効果としては十分嬉しいですよね。

また、テストでこれだけ効果があるのであれば、面接やプレゼンなど他のことにもエクスプレッシブ・ライティングの効果が期待できそうですね。


[参考文献]

*1 : Writing About Testing Worries Boosts Exam Performance in the Classroom

Naoto

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