新しいことを勉強するときには例題で学習効果が高まるという研究結果

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本稿のテーマは効果的な学習方法について、特に「例題」の必要性について考えていきたいと思います。

例題は現在でも多くの教科書で使用されていて、

  • 最初に法則などの説明があって
  • 次のその法則の使い方を示した例題があって
  • 最後に練習問題がある

という構成になっているものが多いと思います。

例題があることで、スムーズに理解ができますし、自分で練習問題を解くときにはその例題の解き方を真似するだけで良いので、学習が効率的に進むことが予測できるわけですね。

それでアバンス大学の研究(*1)が例題の効果について検証してくれていて

  • 例題と練習問題の有無や順番を変えたときに学習の効果や学習へのモチベーションはどのように変わるのか?

ということを実験してくれていました。本稿ではこの研究を参考に例題の効果について見ていきましょう。

例題と練習問題

この研究では例題の効果を調べるために、大学1年生157名に新しく台形公式という数学の積分に関する公式を使った4つの問題に挑戦してもらっています。ちなみに実験の前で大学1年生らは台形公式の知識は持っていないということで、新規の内容を学習するときの例題の効果を狙った実験になります。

そして、4つの問題はそれぞれ例題が練習問題のどちらかになっていて、

  • 4問全てが例題のグループ
  • 例題→練習問題→例題→練習問題のグループ
  • 練習問題→例題→練習問題→例題→のグループ
  • 4問全てが練習問題のグループ

の4つのグループに分かれて学習効果が測定されています。4問とも例題なら特に努力も必要なく楽に学べる一方で、最後の4問とも練習問題のグループでは自力で解法を見つけなければいけないというなかなかハードな設定になっています。

ちなみに4つの問題は全て台形公式を使って解くものですが、最初の2つが「フィットネスと消費エネルギーに関する問題」、後の2つが「洗浄機と石鹸に関する問題」と文脈と問題の解き方が少し変えられています。こうすることで、同じ文脈で似通った問題を解く力と、違う文脈の問題に応用する力の2つが測定できるわけですね。

さらに、この研究では参加者の勉強へのモチベーションや自信にも注目していて、

  • 最初に練習問題が割り当てられたグループの人は、自信が無くなってモチベーションも低下してしまうのでは?

という懸念も検証してくれています。

結果:

4つのグループでタスクのパフォーマンスにどのような差が出たのかというと、

  • 例題が含まれる3つのグループの方が、全て練習問題のグループよりも、同じ文脈内でのタスクのパフォーマンスが有意に高かった
  • 例題が含まれる3つのグループの方が、全て練習問題のグループよりも、違う文脈へ応用するときのタスクのパフォーマンスも有意に高かった

ということ。

つまり、新しいことを学習する場合には例題が含まれていた方が学習の効果はずっと良いということですね。例題が一つも含まれないグループだけが学習のパフォーマンスが低下してしまっているので、最低でも一つは例題があった方が良いでしょう。

結果2:モチベーションへの効果

次に4つのグループのモチベーション面への効果を見てみると

  • 全て練習問題のグループは、自己効力感が低かった
  • 全て練習問題のグループは、自分自身の有能感も感じにくくなっていた
  • 全て練習問題のグループは、問題の大変さをより強く感じていた
  • 全て練習問題のグループは、勉強内容への関心も低かった

ということで、例題がない場合にはモチベーション面もガクッと低下してしまうという結果が得られています。

その中の一つとして4つの問題での自己効力感の変化をグラフで見てみると、

全て練習問題の紫色の線のみがずっと低い水準にとどまっていることが分かります。面白いのが緑色の練習問題→例題の順に解いたグループの結果で、初めの練習問題で低かった自己効力感が、2つ目の例題でグッと向上していて、その後は高い水準を維持していることが分かります。なので、自信をつけるという意味でも1つは例題を学んでおくことは大切ということが分かります。

まとめ

本稿では「学習における例題の効果」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 新しいことを勉強するときには例題があると学習の効果が向上する
  • 例題があるとモチベーション面(自己効力感や有能感、内容への関心)も向上する
  • 特に一つも例題がない場合に、学習の効果やモチベーションはガクッと低下してしまうので注意

ということですね。

今回の研究は新しいことを学習するときを対象にしています。学習には「望ましい難易度」という考えもあって、自力で努力して身に付けた知識ほど長期的に記憶が続いて、さらに応用力も付きやすいということも分かっています。なので、両者を考慮すると、学習の最初の段階では例題でスムーズに基礎知識や自信を身につけて、その後に応用問題を自力で頑張って解くというのが良いのかもしれませんね。


[参考文献]

*1 : Examples, practice problems, or both? Effects on motivation and learning in shorter and longer sequences

Naoto

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