寝起きのダルさは、好きな音楽で解消できるという研究

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朝起きた直後や、昼寝から起きた直後には、

  • 頭がうまく働かなくて、まだ眠気もとれないだるさ

が残ってしまうもの。私も朝パッと起きるのが苦手で、ウトウトとなかなか布団から抜け出せません。

この現象は睡眠慣性といって、体や脳が睡眠状態から起床状態に変わるのに切り替わるのに時間がかかってしまうことを意味しています。睡眠慣性の時間は20分くらいという研究もあるようですが、完全にパフォーマンスを発揮できるようになるには2時間かかるという研究もあります。

そこで、本稿では

  • 睡眠慣性を断ち切って、パッと起床モードに切り替えるには何をすればいいのか?

について、広島大学の研究(*1)を見ていきましょう。

音楽と睡眠慣性

広島大学の研究では

  • 起床後に音楽を聴くことで、脳を覚醒させて睡眠慣性を断ち切れないか?

ということを調べてくれています。確かに音楽を聴くとテンションが上がったりするので、脳を起こすのにも効果がありそう。なかなか面白い着眼点ですよね。

それでこの研究では、実際に16人の学生を対象に、

  • 20分の昼寝だけしてもらうケース
  • 20分の昼寝の後に自分の好きな音楽を聴くケース
  • 20分の昼寝の後に特に好きではない音楽を聴くケース

の3パターンで睡眠慣性の違いを測定しています。

睡眠慣性をどのように測定したのかというと、

  • 主観的な眠気の強さ(0〜100)
  • 主観的な心地よさ
  • オッドボールタスクで測定した脳の反射速度と正確さ

をデータとして取得しています。オッドボールタスクとは、画面に黄色い円と白い円のどちらかが一瞬だけ表示されるので、黄色い円が表示されたときだけ、手元のボタンをできるだけ早く押すというもの。寝ぼけていると脳がちゃんと働かないので、ボタンを押す反射速度が遅れてしまうわけですね。

結果1:音楽と眠気

最初に音楽を聞かなかったグループと比べた時の、眠気や心地よさの感じ方を見てみると、

  • 好きな音楽を聴いたときは、眠気が一番少なく(−27)、心地よさも一番高かった(+16)
  • 好きでない音楽を聴いたときは、眠気は少し低下した(−20)。しかし、心地よさは変わらなかった。

ということ。

つまり、音楽は昼寝直後の眠気を軽減してくれる効果がある。しかも、自分の好きな音楽の方が効果がグッと高いということです。起床直後でなくても、好きな音楽を聴いたときと、興味のない音楽を聴いたときでは、テンションの上がり方が違います。それと同じで、起床後の聴く音楽の選曲も大切みたいですね。

結果2:音楽と脳機能

続いて、音楽を聴いたときのオッドボールタスクの成績を見てみると

  • 好きな音楽を聴いたときは、脳の反応速度が向上し(−40ms)、ボタンを押す正解率も高まった(+12%)
  • 好きでない音楽を聴いたときは、脳の反応速度が少し向上し(−9ms)、ボタンを押す正解率も少し向上した(+5%)。しかし、統計的に優位な効果とは言えなかった

ということ。

つまり、実際の脳のはたらきを見ても、好きな音楽を聴くと、脳は睡眠状態から早く復帰するということ。

昼寝をすると午後の仕事のパフォーマンスが上がると言います。昼寝の直後から最大のパフォーマンスを発揮したいなら、起床直後に好きな音楽を聴くと脳がパッと起きてくれるでしょう。しかし、音楽は脳を覚醒するメリットがある一方で、複雑な仕事で必要な深い集中を阻害してしまう可能性もあるので注意が必要です。今回のタスクのように音楽を聴きながらでもできる簡単なタスクでは間違いなく効果はあるでしょう。

まとめ

本稿では「音楽が睡眠慣性を断ち切るのか?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 起床直後に音楽を聴くことで、眠気が取れるし、脳も覚醒してパフォーマンスが向上する
  • 選曲も大切で、自分の好きな音楽を聴くことでこの効果は高まる

になります。

朝起きたときや昼寝から起きたときは、まずは好きな音楽をかける習慣をつけると、寝起きがスムーズになりそうですね。目覚ましの音を自分の好きな音楽にしてみるのも良いかもしれません。寝る前にカフェインを取ることも寝起きを改善するのに有効なので、昼寝なら合わせて使ってみるのも面白そうですね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : The effects of the preference for music on sleep inertia after a short daytime nap

Naoto

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