年齢を重ねるにつれて人は親切になるのか?
性格は変えられるものなのか?
この問題は難しいものですが、時間的な視点を変えると見えてくるものも違います。
まず短期的な視点で見てみると、性格を急に変えることは難しいもの。内向的で物静かな人が、明日から楽観的なムードメーカーになれと言われても、そんなの無理でしょう。
一方で長期的な視点に立ってみると、むしろ性格が変わらない人の方が珍しいことに気がつきます。子供の頃に好奇心旺盛ではしゃぎ回っていた子も、大人になると自律してしっかりとするもの。また、怒りっぽかった上司が、高齢になるにつれて性格が丸くなるということもよくあることですよね。
本稿では、こうした年齢による性格の変化の中から
- 人は高齢になるほど、他人のための選択を多く取るようになるのか?
を実験してくれた研究を見ていきましょう。
高齢になるほど親切なのか?
ライアソン大学の研究では、年齢による選択の違いを分析するために、
- 18〜35歳の若者32名
- 65〜88歳の高齢者30名
を対象に、お金の利益・損失・寄付に関する選択タスクを行っています
この選択タスクでは
- ①お金の利益の選択タスク
短期的に小さな利益と、長期的で大きな利益のどちらを選択するかの問題。
例えば、いますぐ5ドルもらうか、7日後に6ドルもらうかの選択
- ②お金の損失の選択タスク
短期的に小さな損失か、長期的に大きな損失のどちらを選択するかの問題。
例えば、いますぐ5ドル払うか、7日後に6ドル払うかの選択
- ③お金の寄付の選択タスク
短期的に小さな額を寄付と、長期的に大きな額を寄付のどちらを選択するかの問題。
例えば、いますぐ5ドル寄付するか、7日後に6ドル寄付するかの選択
の3種類のタスクを金額の値を変えて何回も選択してもらっています。
これらのタスクの選択傾向から
- 年齢が高くなるほど、長期的な利益の選択がうまくなるのか?
- 年齢が高くなるほど、大きな寄付金額を選択するようになるのか?
が分析できるわけですね。
結果:年齢による選択の違いとは?
早速実験の結果を見てみると、
- 高齢者の方が、長期的な利益を選ぶのがうまく、若者は短期的な利益を選択しやすかった
- 損失の選択の場合には、高齢者も若者も短期的に小さな損失を選ぶことができていた
- 高齢者の方が長期的に大きな寄付を選ぶ傾向が強く、若者の方が寄付金額は少なかった
ということ。
つまり、高齢者になるほど、長期的な選択がうまくなり、利他的な選択も増えるということ。まさに想定通りの結果が得られているわけですね。逆に若者ほど短期的な利益を優先し、自分の利益を最大化するような自己中心的な選択を行いやすいということ。歳を重ねることが、選択の賢さや親切心を育んでくれているのかもしれませんね。
まとめ
本稿では「人は歳をとるほど親切になるのか?」についてお話ししました。
ポイントをまとめると
- 人は歳をとるほど、より大きな金額を寄付するようになって、親切心が向上していた
- 人は歳をとるほど、短期的な小さな利益よりも、長期的な大きな利益を選択する力も向上していた
ということ。
私もまだまだ未熟者ですが、子供の頃を思い返してみると、ずいぶんと利己的な行動は減ったように思います。社会に出て働くとか、自分の家族を持つとか、人と助け合う必要がある環境いると、だんだんと性格も親切になっていくのかもしれませんね。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]