計画の精度って、やる人の実行力に大きく影響されるよねという話
仕事の計画、試験前の勉強の計画、将来の貯金の計画など、人は将来のために計画を立てて行動するものです。
しかし、なかなか計画通りにはいかないもので、計画よりも遅れをとってしまうことが多いでしょう。これは計画錯誤といって、自分の能力を過信したり、将来を楽観的に考えたりで、人は計画を正確に立てるのが苦手なんですね。
そこで本稿では、計画の精度に関する研究から
- 正確な計画って、計画そのものの精度も関係するけど、やる人の実行力も大きく影響するのでは?
ということを調べてくれた研究を見てみましょう。
計画の精度と実行力
計画を達成できるかどうかは、計画自体の精度もそうですが、やる人の実行力にも大きく作用されます。
人でなく機械の計画を立てるのであれば、「この機械は一日100個製品を生産できるから、1万個作るには10台の機械を10日間動かせば良い」と簡単に計画が立てられます。そして、この計画は正確に実行されるでしょう。
しかし、人の計画の場合には
- モチベーションが湧かずに先延ばししてしまった
- 他の仕事で十分に時間が取れなかった
- 思っていたより大変で、時間も多くかかった
など、不確実性やモチベーションなどの影響を強く受けます。
そこでやる人の実行力が大きく影響して、
- 計画を達成したいと強く思う人は、計画通りに進めようと頑張るので、最終的に計画通りに進んで計画の誤差が少なくなる
- 計画通りに実行するモチベーションが低い人は、ずるずると計画から遅れて、計画の誤差は大きくなる
と、計画そのものの精度よりも、実行力の方が大切な可能性もあるんですね。
実験:実行力が高い人ほど計画の誤差が少ないのか?
アムステルダム大学の研究では、実際に実行力と計画の誤差について実験を行っています。
この実験では、大学生を対象にして、レポート課題を行ってもらいます。このとき、
- 何日からレポートに取り組み始めるか?
- 何日でレポートが完成する見込みか?
を事前に見積もってもらって、レポート完成までの計画を立ててもらっています。
そして、半分の参加者には、計画の実行力を高めるために
- 具体的にいつ・どこでレポートの作成を行うのか?
の計画までを立案してもらっています。
そして課題の提出期間までは、いつ、どれくらいの時間を課題に使って、何日にレポートが完成したのか、が測定され、計画どの誤差が分析されています。
結果:実行力と計画の達成度
実行力が高い人と低い人で、実際に課題にかかった時間や、計画との誤差の結果を見てましょう
計画 | 実績 | 誤差 | |
実行力が高い人 | 0.85日 | 1.02日 | 0.17日 |
実行力が低い人 | 1.67日 | 2.90日 | 1.23日 |
この表からわかるように、
- 実行力が高い人は、より厳しい計画を立てているが、その計画通りに課題を達成できている
- 実行力が低い人は、より長い時間の計画を立ているのに、実績はそれよりもずっと遅れている
ということ。
やはり実行力が高い人ほど、計画の誤差が少ないという結果になっています。しかも、実行力の高い人は、計画自体もより厳しいものになっていることも、実行力の大切さをより際立てています。正確な計画に見えるのは、実はやる人が計画を達成しようとする実行力が高いだけという可能性もあるわけですね。
ちなみに、なぜ実行力が高い人は計画の誤差が少ないのかの分析で一つわかっていることもあって
- 実行力が高い人は、計画に関係ないことで邪魔されることが少なかった
ということ。
実行力が高い人は、いつどこでレポートをやるのかを具体的に決めています。そのため、レポートの時間と環境をしっかりと確保できていて、その時間に邪魔が入ることが少ないのかもしれません。最終的には実行力が低い人が3日かかった仕事を、実行力が高い人は1日で終えているので、計画の具体性は高めることの大切さがわかります。
まとめ
本稿では「計画の精度の高さって、やる人の実行力に左右されるよね」という話をしました。
ポイントをまとめると、
- 実行力が高い人は、より厳しい計画を立てるが、計画の達成率が高く、誤差も少ない
- 実行力が低い人は、低い目標の計画を立てているのに、計画の達成率が悪く、計画の誤差が大きい
ということ。
計画を精度良く立てることも大切ですが、その計画を達成できるように実行力を高めることも大切ということですね。そのためには、計画の具体性をあげて、いつ、どこで、何をやるのかを明確にしていきましょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]