ネガティブな感情を切り離すにはWhyを考えると良いという研究

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ネガティブな感情のコントロールは難しいもので、怒りや不安、悲しみなどの感情から抜け出せなくなってしまうときもあると思います。

ネガティブな感情はうまく対処できれば心の中で鎮めることができますが、下手に対処すると逆に嫌な経験を思い出してネガティブな感情を強めてしまうというのがやっかいな点です。

そこで、ネガティブな感情にうまく鎮める方法として、コロンビア大学の研究(*1)が

  • ネガティブな感情に対してWhyを考えると良い!

という結果が出ていて面白かったので、本稿ではその中身を見ていきましょう。

WhyとWhatの違い

ネガティブな感情への対処としてよく言われるのは、ネガティブな感情から一歩引いて少し距離を置こうということです。心理学ではネガティブな感情でいっぱいになってしまっている状態をHotな状態といい、逆にネガティブな感情を冷静に受け止めている状態をCoolな状態ともいいます。

それでHotな状態ではまさにネガティブな感情の真っ只中にいるので、目線が感情に捉われてしまって、今起こっている出来事や今何を感じているかという具体的なWhatの視点が支配的になっていると考えられます。一方で、Coolな状態では、ネガティブな感情から距離を置いて客観的な目線でいるので、なぜこの感情を感じているのか?みたいな抽象的なWhyの視点が強くなると考えられます。

コロンビア大学の研究(*1)ではこの視点の違いを利用して

  • 意図的にWhyを考えるようにしたら、自然とネガティブな感情と距離を置けて、うまく感情を切り離せるのでは?

ということを検証してくれたわけですね。

Whyはネガティブな感情に効くのか?

この研究では155人の参加者を集めて、激しく怒りを覚えた出来事を思い出してもらいます。このときに思い出し方の指示で参加者は2つのグループに分けれれていて、

  1. 怒りに浸って思い出す
    当時の状況を振り返ってもらって、それがもう一度あなたの身に降りかかったらどうかを想像する
  2. 距離を置いて思い出す
    一歩引いた視点に立ってもらって、その当時に起こったことがもう一度起こったらどうかを客観的な視点で思い出す

さらにWhatとWhyの視点でも2つのグループに分けられて、

  1. Whatの視点
    当時の出来事の具体的な現象や感情に注目して思い出してもらう
  2. Whyの視点
    なぜその感情を感じたかの理由に注目して思い出してもらう

つまり、合計で4つのグループができて

  • 怒りに浸って具体的な感情(what)を思い出す
  • 怒りに浸って感情の理由(why)を思い出す
  • 距離を置いて具体的な感情(what)を思い出す
  • 距離を置いて感情の理由(why)を思い出す

ということですね。

結果

それで、これらの4グループで思い出してもらったとき怒りやネガティブな感情の強さが次のグラフになっています。

4本の棒グラフのうちの一番下の白い棒グラフが距離を置いてWhyを思い出したグループになります。このグラフから分かるのは

  • 距離を置いてWhy(なぜこの感情を感じているのか?)の視点で考えると、怒りなどのネガティブな感情を抑えることができる

ということです。グラフを見ても白い棒グラフだけ短くなっているのが分かりますよね。

それでこの研究ではもう一つの実験により、なぜWhyの視点が効果があるのかを確かめています。その結果からわかっているのは

  • Whyで距離をおいて考えると、考え方が抽象的になる。
  • 考え方が抽象的になるほど、ネガティブな感情への敏感さが減っていく

ということ。つまり、人は具体的に考えるほど感情を感じやすくなって、抽象的に考えるほど感情を感じにくくなるということですね。Whyの視点は抽象的な考えなので、感情への感度が下がって、冷静にその出来事に向き合えるわけですね。

まとめ

本稿では「Whyの視点がネガティブな感情の対処に効く」という話をしました。

ポイントをまとめると

  • 一歩引いて「なぜこの感情を感じているんだろう?」というWhyの視点で考えると、ネガティブな感情を抑えることができる!
  • 考え方が抽象的になるほど、ネガティブな感情への感度は低下する

ということですね。

Whyで考えるというのは使い勝手も良く、実用的なテクニックなのではないでしょうか。怒りを感じているときは「なぜ怒りを感じているのか?」を考える、将来が不安なときは「なぜ将来に不安を感じているのか?」を考えるなど、ネガティブな感情にはWhyの視点の使い所は多そうですね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : When asking “why” does not hurt distinguishing rumination from reflective processing of negative emotions

Naoto

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