昔を懐かしむ気持ちが幸福感を高めるのはなぜか?

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ノスタルジアとは昔を懐かしむ気持ちで、「学生時代はこんなことしたな」とか、「あの人は昔こんな人だったな」とか、自分にとって大切な思い出に浸ることです。

ノスタルジアには色々と良い効果があって、内発的モチベーションを高めてくれたり、幸福感を高めてくれたりすることが分かっています。考えてみるとノスタルジアは人生の節目であったり、行き詰まったりときに感じやすいもので、こうした人生に壁にぶつかっているとき乗り越える気持ちを生み出してくれるのがノスタルジアとも考えられるんですね。

そこで、サリー大学らの研究(*1)が

  • ノスタルジアが幸福感を高めてくれるのはなぜなのか?

について詳しく調べてくれていましたので、本稿ではその中身を見ていきましょう。

ノスタルジアと年齢の関係とは?

この研究では4つの調査をしているのですが、最初の調査では18歳〜91歳まで幅広い年齢の443人に

  • 年齢や性別などのその人の特徴
  • 普段のノスタルジアを感じやすさ
  • 6つの幸福感(自律、コントロール感、成長感、人生の目的感、自己受容、人間関係

を測定して、どんな人がノスタルジアで幸福感が向上しやすいのかを分析しています。

結果:

最初にノスタルジアの頻度と年齢に関して分かったことは

  • ノスタルジアはどの年齢の人でも日常的に感じている
  • 30歳以下と75歳以上の人は特にノスタルジアを感じる頻度が多かった

ということ。ノスタルジアは昔を懐かしむ気持ちなので、思い出の多い75歳以上で感じやすいのは納得ですね。30歳以下の人がノスタルジアを感じやすかったがなぜかというと、人生の転機が多いことが考えられます。小学校・中学校・高校・大学への入学や、就職、結婚など人生の転機が30歳以下では多いので、その節目節目でノスタルジアを感じやすいわけですね。

次にノスタルジアと幸福感の関係を見てみると

  • ノスタルジアを感じやすい人ほど、年齢とともに幸福感が向上する傾向があった
  • ノスタルジアを感じやすい人は、幸福感の中でも環境のコントロール感と人間関係の2つが高まっていた

ということ。やはり思い出の多い高齢者ほどノスタルジアで幸福感が大きく向上するということですね。

なぜノスタルジアは幸福感を向上するのか?

ノスタルジアは高齢者と人生の転機のおおい30歳以下で感じやすいということで、先の研究ではノスタルジアが幸福感を向上する効果には「限りある時間の認識」が関係していると考えています。限りある時間の認識とは

  • 高齢者が自分の人生の時間は限られていると感じたり
  • 大学の卒業を控えた生徒が、学生生活もあとわずかだと感じたり

といった限られた時間が終わってしまう感覚のことですね。

それでこの研究では大学生を対象に、大学3年になって学生生活も残り少ないと感じさせたときに、ノスタルジアがどのように作用するのかを調べています。

結果

研究の結果として分かったことは

  • 学生生活の残り時間に限りがあることに意識が向くと幸福感は低下してしまった
  • しかし、学生生活で自分にとって大切だったことを思い出してノスタルジアを感じることができた人は幸福感は向上していた
  • 日常の些細なことや学生生活で運が良かったことを思い出した人は幸福感は低下したままだった
  • 卒業後の未来のことに意識を向けだすとノスタルジアは低下した

ということ。

つまり、なぜノスタルジアが幸福感を高めてくれるのかというと

  • ノスタルジアで大切な思い出を懐かしむことは、時間の節目の幸福感の低下を防いでくれるから

ということです。ノスタルジアを感じることで、今の時間区分から次の時間区分へと幸せな気持ちでスムーズに移行できるわけですね。ノスタルジアは懐かしく思えば何でも良いというわけではなく、自分にとって大切な意味を持つ過去を振り返ることが必要みたいなので、その点は注意が必要ですね、

まとめ

本稿では「ノスタルジアはなぜ幸福感を向上するのか?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると

  • 高齢になるほどノスタルジアによる幸福感の向上は大きくなる
  • 特に限りある時間を意識したときにノスタルジアは感じやすく、ノスタルジアは限られた時間が終わってしまうときの幸福感の低下を防いでくれている
  • ノスタルジアは自分にとって大切な意味のある過去を思い出すのがポイント

ということですね。

人生に迷っているときや新しい人生を始めるときなんかは、積極的に過去の大切な思い出を振り返ってみると、幸福感が高まって気持ち的にスムーズに新しいスタートに向かえるでしょう。ノスタルジアを感じるためには、子供の頃の写真とか子供の頃好きだったものとかの思い出の品を使うのもいいかもしれませんね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Nostalgia Shields Psychological Wellbeing from Limited Time Horizons

Naoto

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