SNSを見るだけで、運動へのポジティブな感情を増やせるという研究

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運動は習慣にした方が良いとは誰もが理解していることですが、新しい習慣を作ることは定着するまでが難しく、なかなか続かないものです。健康のためには、早歩き程度の適度な運動なら週150分以上、ジョギング程度の激し目の運動なら週に75分以上が推奨されています。これに届かない人も多いのではないでしょうか?

では、なぜ運動が続けられないか?というと、その原因の一つは運動が楽しくないからです。当たり前のことですが、辛いけど健康のために運動しなければいけないといモチベーションと、楽しいから運動するというモチベーションでは、後者の方が長続きしやすいわけですね。

そこで、ノルウェー科学技術大学の研究(*1)が

  • インスタグラムを使えば、運動の楽しさや運動への情熱を向上させることができるのでは?

という実験をしていました。本稿ではこの研究を参考に、SNSを活用して運動を楽しむテクニックについて学んでいきましょう。

運動のモチベーションと情熱

この研究では、自己決定論というモチベーションに関する理論と、2種類の情熱に関するモデルをベースに、運動の習慣化を考えています。

自己決定論とは、

  • 自律:自分の意思で選択して行動をしていること
  • 関係:自分の行動を理解してサポートしてくれる人間関係があること
  • 有能感:自分の能力に自信があって、行動に踏み出せること

の3つの要素をモチベーションの三大柱とする理論です。この3つの柱に準じたモチベーションは、その人のアイデンティティとも深く繋がります。例えば、ランニングで言えば、好きだから走るという気持ちがあることはもちろん、自分と走るが一体になって、自分はランナーだというアイデンティティが形成されているような感じです。

次に2種類の情熱とは

  • 調和的情熱
    自分の好きなことの情熱を注いでいること。
  • 脅迫的情熱
    好きではないけどやらなければいけないという強迫観念から情熱を注いでいること

の2つのタイプに情熱を分ける方法です。調和的情熱は、情熱を燃やせば燃やすほど楽して充実していく良い情熱なのに対して、脅迫的情熱は逆に自分をすり減らしてネガティブな感情が強くなってしまう悪い情熱になっています。

運動とインスタグラムの実験

ノルウェー科学技術大学の研究では、運動のモチベーションや調和的な情熱を向上させるために、インスタグラムが活用できないか?ということを検証しています。

インスタグラムを使うことで、運動の楽しさや運動に関する知識を、動画や投稿で簡単に共有することができるので、それにより参加者の運動への関心や情熱を高められると考えたわけですね。

それでこの研究では普段から運動する人を518人集めて、

  • 4週間インスタグラムを活用しながら運動するグループ
  • 4週間普段通りに運動をするグループ

の2つに分けて、運動に関する情熱やポジティブ感情/ネガティブ感情の変化を測定しています。

結果:インスタグラムと情熱・感情

結果がどうなったのかというと

  • インスタグラムには情熱を向上する効果はなかった
    (調和的情熱も脅迫的情熱も特に変わらなかった)
  • インスタグラムでポジティブ感情は増えた
    (ネガティブ感情は変わらなかった)

ということ。

運動に関するインスタグラムを見ることで、運動が楽しくなったり、面白く感じたりというポジティブ感情の向上効果があるということですね。

情熱が向上しなかった理由として、情熱は一時的な感情よりも深くアイデンティティと結びついていて、情熱を向上させるにはもっと時間や労力がかかるという点が考えられています。インスタグラムの良い点は手軽にできるということですが、その手軽さゆえに情熱を向上させるまでは至らないようですね。

まとめ

本稿では「インスタグラムと運動の情熱」に関するお話をしました。

ポイントをまとめると

  • インスタグラムを見るだけで情熱までは向上しない
  • だけど、インスタグラムで運動の楽しさや面白さといったポジティブ感情は増やすことができる

ということです。

運動がどうしても習慣として続かないという人は、まずは運動に関するインスタグラムやYouTubeの動画を見る習慣をつけて、運動への関心やモチベーションを高めるといいのかもしれませんね。私もYoutubeで筋トレの動画や勉強動画を見てモチベーションをもらっているので、今回の研究結果はよく分かる気がします。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : When Passion Does Not Change, but Emotions Do: Testing a Social Media Intervention Related to Exercise Activity Engagement

Naoto

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