注意力の切り替えコストは、注意力を向ける方向によって変わるという研究

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注意力とは一つのことに意識を向け続ける能力のことを言います。カメラの映像を異常がないか監視し続けたり、計算問題を解くのに集中し続けたりするようなときに発揮される力ですね。

そして、この注意力には向ける方向が大きく2つあります。

  • 内部への注意力
    自分の頭の中に注意力を向けること。
    例えば、頭を使って複雑な問題を解いたり、頑張って記憶を思い出そうとしたりするときの注意力。
  • 外部への注意力
    外部にある情報や刺激に注意を向けること。
    例えば、音楽を聴くことに集中したり、映像を見るのに集中したりするときの注意力。

急に話しかけられると集中力が途切れてしまうように、注意力はすぐに発揮できるものでなく、発揮しようとすると時間的なコストがかかるものです。そのため、内部の注意力と外部の注意力でも切り替えるのにコストはかかるもので、

  • 内部→外部の切り替えコスト
    自分の頭の中に注意力を向けていると、急に外部の刺激に注意力が向けられない
  • 外部→内部の切り替えコスト
    外部の刺激に注意力を向けていると、急に自分の頭の中に注意力は向けられない

と、注意力の切り替えコストにも2つの方向が考えられます。

ゲント大学の研究では、この点について

  • 内部への切り替えと外部への切り替えで、切り替えにかかるコストの大きさは違うのでは?

ということを調べてくれていました。本稿ではこの研究を参考に、マルチタスクのようなタスク切り替えにより、どんな時により大きなコストがかかってしまうのかを見てみましょう。

実験:外部と内部の注意力の切り替え

ゲント大学の研究では、次の3つのタスクを使った3つの実験により、内部への注意と外部への注意の切り替えコストの違いを測定しています。

  • 外部に注意するタスク
    4つの図形が映し出されて、その中の一つがハイライトされる。これとは別にもう一つ図形が映し出されるので、ハイライトされた図形ともう一つの図形が一致するかどうかを回答する。
  • 内部に注意するタスク
    4つの図形が映し出されるので、それら4つの図形の形と位置を記憶する。その後、4つの図形は画面から消えるので、記憶を頼りに、ハイライトされた場所にあった図形ともう一つの図形が一致しているのかを回答する。
  • 足し算タスク
    画面に映し出された3つの数字を足し合わせて回答する。

参加者はこれらのタスクを、タスクを切り替えたり、同じタスクを連続だったりと混ぜ合わせて、合計で80問解いたんですね。そして、タスクの切り替えコストとしては、そのタスクを完了するのにかかった時間が測定されています。

結果1:内部への注意と外部への注意の切り替えコスト

早速結果を見てみると、

  • 同じタスクを連続で行うときよりも、違うタスクに切り替えた方が、タスクの切り替えコストで回答が遅くなった
  • タスクの切り替えコストは、外部に注意するタスクへの切り替えコスト(31ms)よりも、内部に注意するタスクへの切り替えコスト(55ms)の方が高かった

ということ。

外部の視覚や音に集中するよりも、自分の頭の中に集中する方が、集中するまでの切り替えコストが多くかかるということ。なので、勉強に集中しているときに、急にスマホの外部刺激が鳴ってしまったときには、集中力を取り戻すのにより多くの時間がかかってしまうでしょう。

結果2:なぜ切り替えコストに差が出るのか?

それではなぜ切り替えコストに差が出るのか?を確かめるために、先の研究ではもう少し詳しく分析していて、

  • 3つのタスクがごちゃ混ぜにされた場合、足し算タスク→外部タスクと足し算タスク→内部タスクは、前が同じ足し算タスクだが内部タスクの方が切り替えコストが高かった
  • タスクの数を足し算タスクと外部または内部タスクのどちらか一方に減らした場合は、外部タスクと内部タスクの切り替えコストの差は無くなった

という結果が得られています。

これから分かることは、前のタスクが同じ足し算タスクでも切り替えコストに差が出るので、先行タスクの刺激が次のタスクに影響している可能性は少ない。さらに、内部への集中する方が、記憶を呼び出す手順などの手間がかかることも想定されるが、外部刺激と内部刺激のどちらか一方に絞ると、切り替えコストの差がなくなるので、この説も考えにくい。

となると残った説としては、内部に注意力を向けると頭が内部集中モードになって、外部に注意を向けるのに時間がかかる。逆に外部に注意力を向けると頭が外部集中モードになって、内部に注意を向けるのにまた別の時間がかかるという説が有力だそうです。

まとめ

本稿では「注意力の方向と切り替えコスト」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • 注意力は頭の内部に向けるか、外部の刺激に向けるかの2種類がある
  • 注意力を切り替えるときには、切り替えコストがかかる
  • 外部へ注意力を切り替えるときよりも、内部へ注意力を切り替えるときの方が切り替えコストは高くなってしまう

ということ。

何かを頭の中で考え込む必要があるタスクは、できるだけマルチタスクや外部刺激を避けて、まとまった時間で集中した方が良さそうですね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : More Efficient Shielding for Internal than External Attention? Evidence from Asymmetrical Switch Costs

Naoto

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