失敗するとパフォーマンスが向上するのはどんなときなのか?の研究

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失敗はできればしたくないものですが、新しいことに挑戦するなら失敗は避けては通れない道でもあります。失敗すると心理的には落ち込んでマイナスになってしてしまいそうですが、人によっては失敗をうまく捉える人もいて、次の2つのパターンのことが起こり得ます。

  • 失敗でパフォーマンスが低下するケース
    失敗することでモチベーションが低下したり、無力感を感じてしまったり、タスクがより難しく感じてしまったりして、同じタイプのタスクのパフォーマンスがそれ以降低下してしまうケース。例えば、小さい頃に数学の勉強でつまづいて以来、数学に苦手意識を持ってしまうとか。
  • 失敗でパフォーマンスが向上するケース
    失敗を学びとして対策を考えたり、次は成功しようというモチベーションが高まったりして、失敗の後で同じタイプのタスクのパフォーマンスが向上するケース。エジソンなど、失敗を繰り返して成功したタイプの人は、この手の思考を持ち合わせていたのでしょう。

面白いことに失敗の捉え方次第で、その後の影響が真逆になりうるんですね。

そこで本稿では、

  • 失敗でパフォーマンスが向上するときってどんなときなの?

という点について調べてくれたニューヨーク大学の研究を見ていきたいと思います。

失敗とパフォーマンスの向上

ニューヨーク大学の研究では

  • 自分が掲げた大切な目標に関することなら、失敗でパフォーマンスが向上するのでは?

と目標を失敗によるパフォーマンス向上のポイントとして取り上げています。

なぜ目標に着眼したのかというと、目標があるということは理想の自分をイメージしているからです。理想の自分のイメージがあれば、失敗したときに「現状の自分と理想の自分のギャップ」が明確に見えるようになります。そうすると、失敗が自分を損なうものでなく、理想へ近づくためのステップアップの課題のように感じられるようになって、失敗の解釈が変わるわけですね。

実験:目標と失敗後のパフォーマンス

ニューヨーク大学の研究では、この説を確かめるために、医者を目指す医学部の学生を96人を対象に実験を行っています。この実験では一つ目のタスクで失敗させて、2つ目のタスクでパフォーマンスが向上するか低下するかを測定しています。このときにタスクには2つの種類があって

  • 医者になる目標に関連するタスク
    「小さな子供の患者が治療を怖がっています。あなたならどう対処しますか?」のような医者として必要なスキルを試すタスク
  • 医者になる目標と関係ないタスク
    「公園を散布していたら一人で泣いて困っている子供がいます。あなたはどう対処しますか?」のような生活全般に関するタスク

となっています。

つまり、この実験で確かめたいのは

  • 目標に関連した失敗は、次の目標に関連したタスクのパフォーマンスを向上してくれる
  • 目標に関連しない失敗は、次のタスクのパフォーマンスは向上してくれない

という点なわけですね。

結果:目標次第で失敗後のパフォーマンスが変わる

早速結果を見てみると、

  • 目標に関連した失敗の後では、目標に関連したタスクのパフォーマンスが向上した
  • 目標に関連した失敗の後では、目標に関連しないタスクのパフォーマンスは低下した
  • 目標に関連しない失敗は、次のタスクに影響はなかった

ということ。

目標に関する失敗の後では、目標に関するタスクのパフォーマンスは461点に向上したのに、目標に関連しないタスクはパフォーマンスが349点に低下しています。スコアの差としても結構大きな差になっているので、目標によって失敗をどう捉えるかはその後の成長に大きく関わってきそうですね。

結果2:目標はなぜパフォーマンスを向上したり低下したりするのか?

それではなぜこのようなことが差が出るのかを心理面から分析した結果を見てみると、

  • 目標に関する失敗の後で目標に関するタスクが続くと、タスクへのモチベーションが向上していた
  • 目標に関する失敗の後で目標に関連しないタスクになると、タスク中に失敗のことが頭で繰り返し思い浮かんでしまっていた

ということが分かっています。

自分の大切な目標に関して失敗すると、その失敗を挽回しようというモードになるみたいで、他のタスクには集中できなくなってしまうようです。もちろん、目標に関するタスクに関しては、失敗がモチベーションになって、タスクのパフォーマンスも向上しているので、失敗の後はとことんその失敗と向き合って学ぶことが大切なのかもしれませんね。

まとめ

本稿では「失敗でパフォーマンスが向上するのはどんなときか?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • 自分の掲げた大切な目標に関する失敗なら、失敗がモチベーションとなってその目標に関するタスクのパフォーマンスが向上する
  • 自分の掲げた大切な目標に関する失敗であっても、その目標関係ないタスクなら失敗が頭に残ってパフォーマンスは低下する

ということ。

目標を持って失敗を成長の機会と捉えられるかどうかで、その後のパフォーマンスはだいぶ変わってくるみたいです。失敗すると自分はダメなんだと広域的に考えてしまうのは、ネガティブ思考で成長できない人の典型的なパターン。失敗しても、今回はここが悪かったと、局所的に自分が改善するべき点を探すようにしましょう。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Effects of Failure on Subsequent Performance: The Importance of Self-Defining Goals

Naoto

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