歳をとるほど脳機能は低下する一方なのか?の研究

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人は若い時ほど脳がよく働き、歳をとるほど脳は衰えてしまうのか?

確かに高齢なると、記憶力が低下して物忘れが多くなったり、反応速度が遅くなったりすることはあるでしょう。

しかし、脳の機能はもっと幅広いもの。数学の問題をじっくりと考え込むとき、感情や衝動を抑制するとき、複数の選択肢から賢い判断をするとき。脳機能をもっと多面的に見ると老化がどこまで影響するのかは気になるところ。高齢で賢い長老が昔から敬われてきたことを考えると、もしかしたら年齢とともに伸び続ける脳機能をあるかもしれません。

そこで本稿では、

  • 脳機能を3つのネットワークで見たとき、老化とともに向上する脳機能はあるのか?

を調べてくれたリズボン大学らの研究(*1)を見てみましょう。

老化で低下しない脳機能はあるのか?

リズボン大学らの研究では、脳機能を次の3つのネットワークに分けています。これは外部の刺激に反応するプロセスを3段階に分けたもので

  • ①注意ネットワーク
    対象への注意を維持し、外部の刺激に備える脳機能
    例えば、
  • ②順応ネットワーク
    注意の対象から情報の変化があったときに、その変化を捉える脳機能
  • ③実行ネットワーク
    情報を処理して、行動の実行や抑制を行う脳機能

となっています。

例えば、画面に悪者が映ったら撃つ、市民が映ったら撃たないという簡単なゲームで言えば、

  • ①注意:画面に注意を維持して、画面上に人が現れるのを待ち構える
  • ②順応:画面から必要な情報を読み取って、人が現れたのを検知する
  • ③実行:画面に映ったのが悪者なら撃つ、市民なら撃たないと情報の判断と行動の抑制を行う

と3つのネットワークが働いているイメージですね。

それでリズボン大学の研究では、

  • 注意・順応・実行の3つのネットワークは、老化とともにどれが低下して、どれが向上するのか?

を調べてくれたんですね。

結果:

早速結果を見てみると、次のグラフようになっています。

左から注意・順応・実行のネットワークとなっていて

  • 注意ネットワークは年齢とともに脳機能が低下してしまう
  • 順応ネットワークは年齢とともに脳機能は向上し続ける
  • 実行ネットワークは年齢とともに脳機能は向上し続ける

ということ。

つまり、高齢になると注意を維持して素早く反応する力が低下してしまうけど、読み取った情報から正確に行動を制御する脳機能は向上し続けるということですね。今回の研究ではこれらの脳機能の向上は少なくとも70歳までは続くということまで分かっています。

まとめ

本稿では「歳をとるほど脳機能は低下する一方なのか?」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • 歳をとって低下する脳機能もあれば、逆に向上し続ける脳機能もある
  • 注意を維持して素早く反応する脳機能は年齢とともに低下してしまう
  • 情報を読み取って適切な行動抑制を行う脳機能は年齢とともに向上し続ける

ということ。

歳をとるほど脳は衰えてしまうという一般常識に反して、中には向上する脳機能もあるのはなかなか希望が持てます。歳をとったからと頭を使うことを敬遠してしまうのではなく、年齢を活かした頭の使い方をするのが良さそうですね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Evidence that ageing yields improvements as well as declines across attention and executive functions

Naoto

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