高齢者が認知能力を向上するにはどれくらい運動すれば良いのか?

運動には体だけでなく脳も鍛える効果があり、
- 運動をすると脳由来神経栄養因子が分泌されて脳が成長する
- 運動後に勉強すると学習効果が向上する
- 運動をすると脳が活性化してタスクのパフォーマンスが向上する
など、様々な効果が知られています。
そのため、運動は老化による認知能力の低下を防ぐのにも有効で、運動は認知症の予防にも効果があります。ボケ防止に脳トをする人がいますが、それよりも運動で脳と体と一緒に鍛えた方が健康効果が高いことでしょう。
そこで本稿では、
- 高齢者が認知能力を高めるには、どれくらいの運動が必要なのか?
について調べてくれた研究を見てみましょう。
高齢者が認知能力の向上に必要な運動時間とは?
今回注目する研究(*1)では、
- 高齢者が習慣的に運動をしたときの認知能力の向上効果
について調べた98件の研究をメタ分析でまとめて、どれくらいの運動が必要なのかを調査しています。研究の対象となったのは総計で11,061人で、平均年齢は73歳となっています。
結果:認知能力の改善に必要な運動時間
早速、研究の結論を見てみると、
- 高齢者が認知能力を改善するにはトータルで52時間の運動が必要
ということ。
面白いのが認知能力の向上を関係があったのがトータルの運動時間のみという点で、
- 週の運動の頻度
- 1回あたりの運動時間
- 運動の期間の長さ
といった要素は認知能力の改善とは関係がないということ。
つまり、1回の運動時間や頻度は自由でよく、トータルで積み上がった運動時間が52時間に達すると認知能力の改善効果が出始めるということなんですね。
参考:どんな認知能力が向上するのか?
この研究で分かったもう一つの結果として、運動により改善される認知能力は
- 脳の処理速度
- 注意力
- 実行機能
- 全般的な認知能力
ということ。逆に効果が弱めだったのは
- 記憶力やワーキングメモリ
となっています。
記憶力やワーキングメモリは効果がある人とない人の両者がいて、もう少し研究の余地がありそうな感じとなっています。
まとめ
本稿では「高齢者が認知能力を高めるための運動量」についてお話ししました。
ポイントをまとめると、
- 高齢者が認知能力を向上するにはトータルで52時間の運動量を積み上げる必要がある
- トータルの運動量を満たせれば、運動の頻度や1回あたりの運動量はあまり関係ない
ということ。
ちなみに運動の方法は有酸素運動系、筋トレ系、ヨガのようなマインドフル系、あるいはこれらの組み合わせのどれでも良いみたいなので、自分が好きで長く続けられる運動を選ぶと良いでしょう。
以上、本稿はここまで。
[参考文献]
*1 : Exercise for cognitive brain health in aging : A systematic review for an evaluation of dose