ゲームで全般的な認知能力は向上するのか?の研究

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本稿のテーマは「ゲームで脳機能は向上できるのか?」についてです。

ゲームでは敵の弱点を突いたり、MPの配分を考えたりと、攻略するためには色々と頭を使います。また、脳トレ用のゲームが発売されていたり、昔ながらのテトリスのようなパズルゲームがあったりと、頭を使うことを前提とするゲームも多くあります。

そのため、パズルゲームを練習して難解な問題を解くことができるようになれば、それはある意味では頭が良くなっているということです。しかし、本稿で注目する頭の良さの基準は少し違って

  • ゲームで鍛えた頭の良さは、ゲーム以外の分野でも発揮される全般的な頭の良さなのか?

という点です。いくらパズルゲームが上手くなったとしても、ただパズルが上手くなっただけで、他の問題でその頭の良さが発揮されないなら、「ゲームで頭が良くなる」とは言えない訳ですね。

本稿ではこの点について実験してくれたカリフォルニア大学の研究(*1)を見ていきましょう。

ゲームスキルは他の分野に転移するのか?

どんなゲームが脳機能を向上させるのか?については色々と研究がされています。有名な例としては、n-back問題というランダムに出現する数字を記憶しながら、n個前の現れた数字を答えるようなゲームで、これにはワーキングメモリを鍛える効果が確認されています。

しかし、このように脳機能が向上する効果は稀で、ほとんどのゲームはそのゲーム自体は上達しても、ゲームを超える全般的な頭の良さの向上はないことが分かっています。

そこで、カリフォルニア大学の研究では、n-back問題をベースにして、認知能力を鍛えるためのゲームを開発しています。下の画像がそのゲームの画面になっていて、画面上の6マス分の泡には、海のキャラクター(カニやクラゲ)がランダムに割り振られ、泡の色もランダムに決まります。この泡は右から左に順番に移動していくのですが、左端の数マス分は泡の中身が見えなくなってしまいます、なので、見えないマスのキャラクターと泡の色を記憶して、一番左端のに来たときにマスの色とキャラクターの種類を答えます。

カリフォルニア大学の実験では、91名の学生を対象に、半分の人には上記のゲームを2日毎に30分ずつ、計4回のセッションを実施してもらっています。もう半分の学生は、比較対象として7×7マスに割り振られたアルファベットの表から、英単語を見つけるゲームを行っています。そして最後には全般的な脳機能が、ゲームを行う前後でどう変化したのかが測定されています。

結果:ゲームのスキルと全般的なスキルの向上

実験の結果を見てみると、まず最初に

  • 4回のセッションを重ねる毎に、認知能力向上ゲームのスコアは確かに向上していた

ということ。つまり、ゲームをやるたびに、ちゃんとゲーム自身のスキルは向上しています。

そして、全般的な能力については、

  • n-back問題で測ったワーキングメモリのスコアは、認知能力向上ゲームを重ねる毎に確かに向上していた
  • 一方で、VSSP(視覚情報記憶を使った記憶テスト)のスコアは、認知能力向上ゲームを行ってもほとんど向上しなかった

ということ。今回の認知能力向上スキルはn-back問題をベースにしているので、この二つのスキルはかなり近いものになっています。つまり、ゲームで確かに全般的な脳機能は向上しているけど、向上したのはゲームにかなり近いスキルのみで、ゲームとあまり関係ないスキルはほとんど向上しなかったということですね。

まとめ

本稿では「ゲームと認知能力の向上」についてお話ししました。

ポイントをまとめると、

  • ゲームで脳機能を向上させるのは意外と難しい
  • 認知能力の向上を目的として設計したゲームなら、全般的な脳機能を向上できる可能性もあるが、それはそのゲームで使う能力に近い範囲までしか転移しない

ということ。

今回のゲームは認知能力を向上させることを目的として設計されているので、一般的なゲームでは脳機能を向上させる効果はほとんど期待できないかもしれませんね。ただし、ワーキングメモリや注意力といった脳機能レベルの頭の良さ以外にも、”経験値を効率良く取得するための敵の狩り方”みたい戦略的な思考といった頭の良さもあると思うので、そういう頭の良さならゲームでも向上できるかもしれませんね。

以上、本稿はここまで。


[参考文献]

*1 : Playing a Video Game and Learning to Think: What’s the Connection?

Naoto

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